05 冒険者ギルド

 昼食代わりの肉串を食べ、再びギルドに向かう。歩きながらどこにどんなお店があるのかをざっと覚えておく。生活必需品とか、後で買いに来なければならないからね。
 ラルフが2階建ての石造りの建物の前で立ち止まった。
「ついたぜ。ここが冒険者ギルドだ」
 建物を見上げると、入り口の上に「冒険者ギルド アル支部」と書いた看板が掛かっており、その隣には盾に1本の剣が斜めに重なっている絵が描かれている。あれが冒険者ギルドのシンボルマークなのだろう。
「さあさあ。入った入った」
 建物を観察しているとしびれを切らしたのか、ティオが俺の背中を押してギルドの中へと押し込んだ。

 中へ入ると正面がカウンター席になっていて、その左側に紙がたくさん貼り付けてある掲示板。さらに左には喫茶スペースが奥まで延びていた。幸いに昼下がりのこの時間帯は人が少なく、2、3人が喫茶スペースにいるくらいだ。雰囲気としては西部劇の酒場に近い。
 カウンターには2人の若い女性がいて俺たちのことを見ていた。二人の視線が俺を見て、つづいて後ろのラルフとティオに移る。
「あら。お帰り。3週間ぶりね」
 黒髪のポニーテイルのきりっとした美人の方がそう言った。顔立ちは西洋風でギリシア人系の美人だ。

――マリナ――
 種族:人間族 年齢:20才
 職業:ギルド事務員  クラス:交渉人
 称号:麗しの受付嬢、モフリニスト
 スキル:交渉3、物品鑑定3、体術3

 もう一人は金髪のふんわりロングの美人だ。

――エミリー――
 種族:人間族 年齢:23才
 職業:ギルド事務員  クラス:交渉人
 称号:麗しの受付嬢
 スキル:交渉3、物品鑑定3、剣術3

 体術や剣術のスキルを持っているのは、やはり荒くれ者が多いことも関係しているのだろうか。
「依頼の報告と、こっちのジュンさんの冒険者登録を頼みます」
 ラルフがそう言うと、エミリーさんが俺の方を見た。
「エミリーよ。こっちがマリナ。二人でギルドの受付をしているから、よろしくね」
「ジュン・ハルノです。お世話になります」
 お互いに挨拶をすると、エミリーさんはマリナさんに、
「じゃあ、マリナ。登録の方を頼むわ」
「わかったわ。……ではジュンさんはこちらへ」
 俺は手招きをするマリナさんのところに行った。

「それでは、まず手数料として1000ディールいただきます。……はい。丁度いただきました」
 マリナさんは渡したコインをカウンターの中にしまうと、引き出しから水晶玉を取り出した。

「それではジュンさんのお名前や賞罰の記録を確認します。こちらの水晶玉の上に手のひらを載せてください」

 マリナさんの指示で、門番のところにあったのと同じような水晶玉の上に手を乗せる。

「……これでいいですか」
「ええ。ちょっと、そのままにしてくださいね」

 マリナさんは向こう側から水晶玉を見て手元の紙に何かを書き写している。と、一瞬、表情が固まった。急にひそひそと話してくる。

「この水晶では名前と種族と賞罰の記録などがわかります。どうやらジュンさんは、内容はわかりませんけど加護をお持ちのようですね」

 ええっと、はい。確かに加護を持っているみたいです。それも凄そうなのを……。
 こういう時はとぼけるに限るね。

「あ、そうなんですか? ……というか、加護ってなんですか?」
「加護というのは神々から特別な力を授けられた称号のようなものですね。どのような加護かを知りたければ修道院にある水晶玉で確認できますよ。……加護をお持ちの方は珍しいです。だから、秘密にされた方がいいですよ」
「はぁ。わかりました。ありがとうございます」
「加護だけでなく、称号やご自身のスキルなども、あまり話さない方がいいです。そういうところにつけ込んできたり狙われたり、面倒のもとになることがありますから」

 あまり自分の情報を漏らすなってことだな。……確かに、冒険者が俺のイメージ通りなら、その方がいいだろう。

「ありがとうございます。そのとおりですね」

 お礼をいうと、マリナさんは微笑んで、
「……はい。もう手はおろしていただいて結構です。今、カードを発行しますので少しお待ち下さい」
と言った。マリナさんは、カウンターの向こうでなにやら作業をしていたようで、終わると銀色のカードを取り出す。
「はい。これがギルドカードです」

 名前:ジュン・ハルノ
 種族:人間族
 賞罰:なし
 冒険者ランク:F
 発行ギルド:エストリア王国アル

 ギルドカードをしげしげと見つめていると、マリナさんが冒険者について説明をしてくれた。
「それでは説明しますね。冒険者には、下からF、E、D、C、B、A、S、SSの8ランクがあります。依頼をこなし、功績を挙げるごとにランクが上がります。ただし、Eランクへ上がる時とCランクへ上がる時にはギルドで試験を受けてもらい、合格しなくてはなりません。
 ちなみにSSランクは、現在、2人だけ登録がありますが所在は不明になっています。もう1000年ほど前の登録ですので、さすがに死亡しているとは思いますが確認が取れていないので記録が残っています。
 その下のSランクですと、だいたい国に一人いるかいないかというくらいですね」

 SSランクってのがどれくらいすごいのか気になるけど、1000年前の登録者2人ではどうしようもないね。むしろ登録が生きているのがビックリするところだ。
 俺はマリナさんの説明に頷きながら、聞き続ける。

「依頼掲示板が右手奥にありますが、ランクごとに分けられています。ご自分のランクより下のランクの依頼のみ受けることができます。依頼を受ける場合は、依頼の紙をここのカウンターにお持ち下さい。期限付きなどの依頼で失敗した場合は、違約金として提示されている報酬の二倍のお金をお支払いいただきます。
 それから、ギルドカードは一種の身分証にもなっています。基本的に世界共通ですが、町の出入りなどの身分を証明する際に掲示して下さい。またギルドと協定を結んでいる商店では、品物を購入する際に割引を受けられます。紛失した際には再発行手数料として、1000ディールを申し受けますので注意して下さい。
 またギルドにお金を預けることができます。預金と引き出しの時は、ギルドカードと水晶玉で本人確認をさせてもらいます。また、ここで預けて別の国の冒険者ギルドで引き出すことも可能です。ぜひご利用下さい。
 えっと。説明はだいたい以上ですが何かご質問はありますか?」

 ふむふむ。テンプレ通りの説明だな。だが、とにかく依頼をやってみないと何がわからないかもわからないんだよな。
 っと、そうそう。安全な宿は聞いておいた方がよさそうだ。

「今のところはないので何かあった時にききます。一つだけ。安全でお手頃な宿があれば教えてもらいたいんですが」
「あ、宿ですか? そうですねぇ。……冒険者の憩い亭がいいでしょうか。冒険者を引退された方が経営しているお宿です」

 すると、隣からティオが割り込んできた。

「おっ、ジュンさん。俺たちもそこに泊まるから、一緒に行こうよ」
「へぇ。ティオたちも? それならお願いするよ」
 俺がラルフたちと行くと聞いてマリナさんは場所の説明を切り上げた。にっこりと笑っている。

「じゃあ場所は大丈夫ですね。それでは困ったこととかあれば遠慮なく相談して下さい。以上で手続きは終わりです」
「ありがとうございます。では」
 俺は、マリナさんに会釈をして受付を離れた。

 ラルフは街道でゴブリンの集団に襲われたことを報告しているようだ。街道沿いの、しかもアルから一日もしない場所だったので、ランクの低い冒険者に注意を促す必要があるとのこと。

 ラルフとエミリーさんが話をしている間、手持ちぶさたになった俺は何気なく依頼掲示板を眺めていた。

 薬草採取、公園の清掃、迷い猫の捜索、大うさぎの狩猟、市内の荷物運び……。
 ランクF用の依頼は想像の通り街中か薬草採取くらいしかないようだ。定番は薬草採取だろうけど、まあ無期限だし明日考えることにしよう。

 掲示板の前で腕を組んで考えていると、手続きを終えたラルフがやってきた。
「おまたせ、ジュンさん。宿へ案内するよ」

 俺は改めて受付嬢の二人に会釈してラルフたちと一緒にギルドを出た。三人でブラブラと宿へ向かった。

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