08 武器屋を探して

 時間は午後4時。依頼を早く終えた冒険者がちらほら帰ってくる頃だろう。

ギルドに入ると、案の定、昼とは違って30人くらいの冒険者がいた。カウンターに並んでいるのは3人。ほかは奥の喫茶スペースで酒を飲んでいる。男女比は8対2。フードをかぶってよくわからないのもいる。
 新人の俺が入っていくと、ちらっとは見られるのがわかったが、興味を引かなかったのかすぐに視線が外された。

 カウンターに並んでいる3人はどうやらパーティーのようで、エミリーさんとマリナさんと話をしている。
 俺が3人の後ろに並ぶと、それを見ていたマリナさんが会話から外れて隣の窓口に移動した。

「ジュンさん。どうぞこっちに。……何かありましたか?」
「あ、いや。ギルドでおすすめの武器屋はないですかね」

 そういうと、マリナさんが合点がいったようで、
「ええっとそうですね。それでしたら冒険者の憩い亭の隣のお店が成り立ての人に優しいです。冒険者の憩い亭のマスターの仲間ですよ」
 そう言われて、たしかに隣にあったなと思い出した。

「ありがとうございます。そこに行ってみます」
とお礼を言ってギルドから出ようとした。
 すると、慌てたようにマリナさんが声を掛けてきた。
「あ! ジュンさん。ちょっといいですか?」

 俺は再び振り向いてカウンターに行く。すると、マリナさんが近くに張ってあったポスターを指さした。
「あと一週間後に初心者の合宿がありますが、どうですか?」
「合宿? あ、有り難うございます。ちょっと検討します」

 マリナさんから離れた俺は張り紙をしげしげと見つめる。
 どうやら一泊二日で街の外へ行くらしく、参加費は無料。期間中の食事はギルド持ちだが、使用する道具は各自負担とのこと。さらに倒した魔物の素材はギルドのものとなるが、冒険者のイロハを教授するとのことだ。

 ……俺には丁度良いな。とすると一週間後の朝に集合。まあ、それまでは街中の依頼をするか。
 これは良いことを教わったと、俺はマリナさんに会釈してギルドから出た。

――――。
 急いで武器屋に入った。もう夕食時になる。今晩はラルフ達と一緒に食べる約束をしていたのだ。
 慌てて宿の隣の武器屋に走り込むと、カウンターにいた背の低いおっちゃんが驚いて見ていた。

「あっ。すみません。急いでいたので」
 言い訳しながら謝ると、ついで値踏みするような目で見てくる。
「ふん。成り立てか。……こんな街中じゃ大丈夫だが、急いでいるときほど慎重にしないと命を落とすぜ」
 そういって、おっちゃんはモジャモジャのひげを一撫でした。

――ターレン――
 種族:ドワーフ  年齢:108才
 職業:鍛冶師
 称号:黒鬼元冒険者ランクA
 スキル:鉱物鑑定3、鍛冶4、剛力3、錬成3、土魔法3

 おお! 初ドワーフ! ファンタジー!
 思わず心の中で喝采を上げる。想像通りのずんぐりむっくりの体型だ。鍛冶をしているせいだろうか。肌が浅黒く焼けている。
 果たして女性のドワーフはどうなんだろう? 幼女か? それとも男と同じずんぐりむっくり&ひげ付きか?
 ……気になる。

「どれ。武器じゃろ? 何がいいんだ?」
と聞いてくるが、俺が武器をつかったのは今日のゴブリン戦だけだ。
「自分にどれがあっているかわからないんです」

 正直にそういうと、おっちゃんはカウンターから出てきた。ずんぐりむっくりした体型だが腕は太く力は強そうだ。
 おっちゃんは俺の両手を観察し、握って何かを確かめていた。そして、再びカウンターに入って、奥の部屋から4種類の武器を持ってきた。

 片手剣が2種類に、メイス、槍だ。「ついてこい」と言って別の扉に入っていくので、俺もついて行った。
 扉の先はお店の裏庭で、木でできた人形が立てかけてあった。

「順番に攻撃してみな」
 そういって、おっちゃんはまず片手剣を手渡してきた。手にずしりと重みがかかるが不思議と手になじむ気がする。
 鞘から剣を抜いてなんとなく構える。そして人形に走り込んで袈裟懸けに斬りかかった。

 すぱんっ!

 ゴブリン戦と同じように断ち切る音がして、木の人形は肩口から斜めにずれて上半分が崩れ落ちた。

 おっちゃんがぽかんと口を開けながら、その切り口を観察して冷や汗を流している。おっちゃんは人形をどかすと、別の人形を持ってきた。

 俺は剣を鞘に納めておっちゃんに返した。おっちゃんは次にメイスをよこした。
 さっきの剣よりもずしりと重い。が、やはり手になじむ気がする。
「しっ!」
 短く息を吐きながら木の人形の脳天に叩きつけた。

 ずどんっ!

 その衝撃が地面に伝わり、少し揺れた気がした。木の人形の主軸が綺麗に地面にめり込んでいる。

 おっちゃんは、それを見て目を丸くした。が、残骸を片付けると次の人形を持ってくる。
 俺はメイスを返して、次の槍を構えた。

「ふっ!」

 突いた槍が狙い通りに木の人形に穴を開けていく。
 さすがに槍はメイスほど人形を破壊はしなかったようだ。

 おっちゃんが人形を確かめに行くと、その後ろを見て青くなる。
 おや? と思ってみていると、おっちゃんが人形をどかした後ろに隣家につづく壁に綺麗に穴が開いていた。
 隣の冒険者の憩い亭から怒鳴り声がする。

「こらーっ! ターレン! なにやっとるんじゃ!」

 おっちゃんが穴から怒鳴り返した。

「悪い悪い。直しとくからよ! 今度、酒奢れ!」

 何も無かったように、おっちゃんは人形を片付けると別の人形を用意する。
 最後の片手剣はやや弧をつけたサーベルタイプの剣で、たたき切るのではなく撫で切ることを重視した刀だ。
 しかし最後の人形も、最初の人形と同じようにすぱっと切れたので違いがよくわからないで終わった。

 おっちゃんが腕を組んで唸る。
「おめえ、一体なにもんだ? 構えも型も全然なっちゃいねえが、おそろしく適正がありやがる。……で、おめえさんはどれが気に入った?」

 俺は少し考えて、
「う~ん。やっぱり最初の片手剣ですかね」
と言った。やっぱり格好いいよね。

「まあ、オーソドックスだからなぁ。……よし。とりあえず、この片手剣でいいじゃねえか? 将来的には片手剣をメインに、いくつかの武器を使いこなせれば、どんな状況でも対処できるだろ」

 おっちゃんはそう言って、最初に試した剣を手渡してくれた。
「そうだな。こいつは普通の再生産品だしなぁ。まあ1万ディールでいいや」
 ちょっとした包丁と同じ値段だ。安すぎないか?
「おっちゃん。いくらなんでも安すぎるんじゃ?」

 そう聞くと、おっちゃんは頭を横に振った。
「おめえさんの腕なら、すぐにランクがあがらぁ。そんときは、もっと良い剣を買ってくれや」
 そういって、俺が何も言わないうちに人形と持参した武器を片付け始めた。

 再び店内に戻り、俺はおっちゃんにお金を支払う。
「まいどあり。しっかりやれよ」
片手剣を受け取った俺におっちゃんが声を掛けた。「ありがとう」といいつつ、俺は店から出て宿に帰還した。

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