26 孤独な戦い

 俺の気配感知に多くの魔物が近づいてくるのがわかる。
 腰の剣を抜いて、二人の前に立ちふさがる。

 俺の戦闘スキルはレベル7だ。誰よりも高い戦闘スキルを信じて二人を守り抜く!

 視認できる距離に魔物の群れが入ってきた。
 ゴブリン、フォレストウルフ、オーク、コボルト、そして、見たことの無い魔物も何匹かいるようだ。

 俺は後ろの二人をちらりと見て、腰を落とし正面をにらみつけた。

「こいやぁ!」

 気迫を込めた声を魔物に叩きつけると、それが合図になったように群れが俺に襲いかかってきた。

 高速機動、回避の発動を意識しながら、ゴブリンの剣をさけてその首を刎る。左右から飛びかかってくるフォレストウルフをバックステップで避けて、まとめて剛剣で両断する。
 高速機動のお陰でゆったりして見える時間の中、俺は着実に魔物を殺していく。

 コボルトが突き出した槍の側面を剣で擦りながら、踏み込んでその首をはね、そのまま飛び上がって斧を振り上げたオークより早く、その頭を兜割りに断つ。
 そのまま後ろにジャンプして着地し、飛びかかってきたフォレストウルフの群れをスラッシュでなぎ払った。

「はあ、はあ、はあ」

 感情が抜け落ちたように、ただただ押し寄せてくる魔物の群れが、荒れた呼吸を整える時間を与えてはくれない。

 目の前がちかちかした瞬間、4匹のコボルトの突き出した槍のうち1本を反らしそこねて、俺の左肩に突き刺さる。
「ぐっ」
 剣で下からなぎ払い、返す剣で切り伏せる。左肩の傷口がすうっと自然回復で治っていくが、その隙に押し寄せるゴブリンの剣をさばきながら切り捨てていく。
 ゴブリンの一匹を切り捨てた時、左脇から強烈なプレッシャーを感じ慌てて向き直ると、オークよりも巨大な魔物がハンマーを横凪にしてくるところだった。
 避ける間もなく剣を盾に受けるが、その力に俺は後ろに吹っ飛ばされて木の幹に全身を打ち付けて地面に膝をついた。内蔵にダメージをくらい、血の塊がこみ上げる。
 背後でリューンさんが息をのむのがわかった。
 自然回復で内蔵が修復されるのを感じながら、俺は再び立ち上がった。

「はあ、はあ……」
「ジュンさん……」
 後ろからリューンさんのかすれた声がするが、それに構わず、俺は目の前のゴブリンに斬りかかった。
「おらぁ!」
 が、ゴブリンを切り捨てた後で、再びハンマーを持った魔物が上段から振り下ろしてきた。今度はサイドステップでそれを避け、がら空きになった腹にスラッシュを打ち込むと、魔物は血を吐きながら倒れた。すぐさまその太い首を切り落とす。

 パキッ

 魔物の首を切り落とした時、乾いた音を立てて手にした剣が根元から折れた。
 俺は手に残った柄を放り投げ、斬りかかってくるゴブリンの剣を避けて右回し蹴りをお見舞いする。蹴りを受けたゴブリンの頭が破裂した。
 チャンスとばかりに3匹のフォレストウルフが飛びかかってくるのを、掌底でアゴを突き上げボディに右のストレートを打ち込む。
 すぐさま足下に転がっているさび付いたゴブリンの剣を広い、コボルトの槍を払う。

 反撃はそこまでだった。
 いきなり横から火弾が飛んできて俺に直撃した。
 火に巻き込まれ髪や肌がただれる。後ろからリューンさんの叫び声が聞こえるが、火だるまの俺にコボルトの槍が突き刺さった。
 全身を覆う火の痛みに、視界はふさがれ喉の奥から声にならない叫び声を上げる。
 槍が体を貫き、膝を突いた俺めがけてゴブリンが剣を振りかざした。

 こんなところで終わってたまるか!
 しかし、体は動いてはくれない。ゴブリンの剣が俺の右肩に食い込んだ。

「がはっ!」
と俯いた瞬間。

 ――ピコーン。
 自動戦闘フルオートコンバットに移行します。

とナビゲーションが告げた。
 ……自動戦闘だと?

 体の奥から力があふれ出し、血流に乗って俺の体に広がっていく。
 突き刺さったままだった槍が燃えて炭になっていく。肩に食い込んだ剣の刃が溶け落ちていく。
 うっすらと赤い光りが覆い、全身を覆っていた火が消え去り両の拳に別の炎がまとわる。
 ビデオを巻き戻すように焼け爛れた皮膚や髪などが回復していく。

 ――自動戦闘モード開始。
 戦闘モード「火炎舞闘」を覚えました。
 スキル「魔闘拳」をマスターしました。
 スキル「強化」をマスターしました。

 自分の意思を離れて体が動いていく。右手を横になぎ払うと拳に宿った炎が放射状に火の半円環となって目の前の魔物を駆逐していく。

 そこへ飛び込んできたのは、魔物に操られた2人の冒険者だった。おそらくさっきの火弾もこいつらの仕業だろう。
 魔物と同じく眼からツタを生やし、異形となった冒険者達。剣士が斬りかかってくるのを交わして、カウンターでストレートを決めると剣士の顔が火に包まれ、ツタがうねうねと動きながら燃えていった。
 すかさず後衛の魔法使いの女が火弾を放つが、左の拳で無造作になぎ払い、一気に踏み込んでその顔にストレートのパンチを放つ。女の顔を殴り、しかも火で焼ける匂いを嗅いで気分が悪くなるが、つづいてフォレストウルフが飛びかかってくると、体が勝手に回避する。

 逆にこっちから踏み込んでフォレストウルフの頭に拳を打ち込むと、その頭部が胴体にめり込み一瞬で全身を炭に替えていく。
 バックステップでリューンさんたちの前に戻ると、拳に魔力が高まっていく。
 さらに次の魔物の群れが押し寄せる。
 半身になって、まだ距離があるというのに拳打の連射をすると、拳から無色の魔力弾が飛んでいく。

 ズドバババババッ

 魔物を打ち砕き、木々をなぎ倒し、地面すらも破壊しながら魔力連弾が飛んでいく。
 俺の前方200メートルが瓦礫と化した。その圧倒的な破壊の跡に俺は内心でおおののいた。

 ――ピコーン。
魔力連弾マナバレット・ストローク」を覚えました。
 スキル「恐怖耐性」をマスターしました。
 称号「殲滅者」を得ました。
 近くの敵性存在の殲滅を確認。自動戦闘を解除します。

 ナビの言葉が消えた瞬間、体から力が抜けその場に倒れ込んだ。

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