36 打ち上げ

「お前たちの前途に! 乾杯!」
「「「乾杯!」」」

 ルイ教官の音頭でみんなで乾杯する。

 地球の居酒屋ほどではないが、やや冷えたエールが染み渡る。
 くうっ。いいねぇ。

「ほら。お前たち、これは俺からのお祝いだ。どんどん食べろ!」
「おおっ。親父さん、ナイスだぜ」
「どんどん食べて下さいね」
「……ん、娘さん、ありがとう」

 みんなで、合宿中のあれこれを話し合う。

「いやあ、カロットさんもいいですが、ここの娘さんもいいっ」
「おいおい。ケイム。もう酔っ払ってるのか? それに後ろ。う、し、ろ!」
「えっ、ええっ」
「ふふふ。ケイムさん、酔っ払ってますねぇ」
「カロットちゃん! こっちこっち」
「はあい。ヘレンさん。今行きますよ.」
「ははは。ケイム。目が白黒してるよ」
「う、うるさいですね。トーマスこそ、どうなんですか!」
「いや、どうって言われてもな」

 周りの冒険者も、合宿帰りと聞くと、それぞれ「お疲れ」と挨拶をしてくれた。

 ふと気がつくと、セレスと目が合う。
 と、次の瞬間、ほんのり顔が赤く。
「ん、んんん? どうした?」
「……いや、何でも無いよ。トーマス」
「…………ん、さっき水浴びの時にラッキースケベ」
「おいっ。ルン! お前、なんで知ってる?」
「……私も水浴びしてた」
「んだとぉ。ジュン。ラッキースケベだと!」
「いや、ルイ教官も絡まないで下さい」

 ふと、背筋が寒い。リューンさんの目が笑っているけど笑っていない。

「いや。リューンさん。あれは…そう、事故なんだ。やましいことはない!」
 俺は慌てて弁明する。
「……じーっ」
「ホントだってば、な」
 セレスに助けを求めると、セレスも、
「そうそう。リューンちゃん。何でも無いからね」
と言った。が、ルンが爆弾を落とす。
「……無防備な姿を見られてた」
「こらぁ。ルン! 追い打ちをかけるな!」
「そ、そう。別に裸を見られたわけじゃないんだから」
「ふうん。そういうことですか」
「いや、娘さんも落ち着こうな」
「別に。私は落ち着いています」

 いや、目が怖いんだが……。

 リューンさんの目におののいていると、トーマスが助け船を出してくれた。
「そういえば、俺たちチームを組むことにしたんだ。……ジュンさんは?」
 おおっ! グッジョブだ。トーマス! よく話題を変えてくれた。心の友よ。

 トーマスに感謝しながら、俺は、
「ん、いや実は、ヘレンもチームに入ることになった」
と言った。それを聞いた瞬間、教官もトーマス達も、
「「「やっぱり!」」」
と声を揃えて言う。

 俺とヘレンは目を白黒させている。その隣でサクラがニヤニヤしているのが見えた。
「え? どういうこと?」
 ヘレンが聞くと、トーマスが、
「だってさ、最初っから仲よさげだったでしょ?」
つづいてランド教官が、
「夜の見張りの時だってな。二人っきりでこそこそ話してたしな」
と言う。
 なんだこれ。折角、ラッキースケベから話が変わったというのに……。
 俺が内心で一人で黄昏れていると、セレスがぼそりと、
「サクラにヘレンか。美女二人つれてじゃ妬まれそうね」
とつぶやいた。ケイムがそれに同調して、
「そうですよ! なにしろ修道院のヘレンさんっていったら警備隊にも人気ありますからね」
と言い、さらにルイ教官も、
「冒険者にだってそうだぞ? ヘレンの姿を見に信仰心もないくせに修道院にいく奴もいたからな」
と言ってエールを飲んだ。

 ヘレンが、
「へぇ。それは初めて聞いたわね」
と言うと、ランド教官が笑って、
「何しろそういう奴らは聖女様に排除されたからな」
と言った。ああ、確かにあの方の目にはお見通しかも知れない。

 ルイ教官はランド教官の言葉にうなづきながら、俺を見る。
「つまりだ。ジュンは聖女様のお眼鏡にかなったってことになるな」
「「「そりゃ、妬まれるわ」」」

 なぜか俺がいじられる展開がつづいたが、やがて合宿の疲れが出始めてお開きとなった。

 最後に、みんなで改めて教官にお礼を言う。
「ルイ教官、ランド教官。本当にありがとうございました」
「いいんだ。俺たちも依頼だしな。……いいか、何かあったら相談しろよ。お前たちは、もう俺たちの後輩も同然だからな」
「ありがとうございました」

 そして、トーマスは自分の宿に、ケイムは自宅へと戻っていき、今にもダウンしそうなセレスとルンがフラフラと階段を上っていく。教官達はさらに二人で飲みに出かけるらしい。
 俺は、サクラとヘレンを連れて部屋に戻った。

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