17 救出の代償

――――。
 洞窟の通路の通路を慎重に進んでいくと、奥の方から誰かが戦っている音が聞こえてきた。
 気配感知からは、片一方からはどす黒い嫌な雰囲気を、もう片方からは力強い雰囲気を感じる。

 通路の先は大きな広間に繋がっていた。
 こっそりとのぞくと、そこでは激しい戦いが繰り広げられていた。
 片一方は不気味な黒いローブを来た真っ白い顔の男、もう一方は黄金色のオーラをまとったギリメクさんだ。

 ギリメクさんの姿を見たシエラが、
「お父さん!」
と叫んで通路から飛びだした。

 すると、ギリメクを襲っていたいくつもの黒い魔力の塊が一斉に動きを止めて、ローブの男の周囲に戻る。
「ふん!」
という声と共に、ギリメクさんは膝まで埋まっていた足を引っこ抜いて、地面に立ち上がる。

――暗黒の天災・グラナダ――
 種族:?? 年齢:??
 称号:??の使徒
 加護:??の加護
 スキル:???????????

 ナビゲーションではほとんど名前しか表示されないが、暗黒の天災とは何かの称号か何かだろうか?

 グラナダは宙に浮かんだ姿勢のままで、面白そうにギリメクさんとシエラさんを見比べ、そして俺たちの姿を見た。
「くくくく。さらに面白いお客さんがきたようですな。……あなたの娘さんですかな?」
 それを聞いてギリメクさんが、シエラさんに怒鳴る。

「なぜここに来た! この馬鹿が!」
「でも! でもお父さん!」
 怒鳴り合う二人を、グラナダはおかしそうに笑いながら見つめた。
「くっくっくっくっ。面白いことを思いつきましたよ」

 そういうとグラナダは指をぱちりと鳴らすと、祭壇の上のライムちゃんとシエラさんがふわっと宙に浮かんだ。
「な、何をする!」
 シエラさんが宙でもがきつづけるが、グラナダは鼻で笑うと、
「私は生け贄を一人必要としています。この少女か、あなたの娘か、どちらか選ばせてあげましょう」
とギリメクさんに告げた。

「貴様。卑怯な!」
とギリメクさんが詈ると、グラナダは、
「くくく。それは我らには褒め言葉ですな。目的さえ達成できればよいのです。さあ、選びなさい」

 ギリメクさんが一瞬俺の方を見た。
「ヘレン。俺が飛びだしたらシエラさんの周囲に結界を張れ。サクラはあのローブに遠距離攻撃だ」
と俺は指示を出し、自らの気配を殺しながら体内の魔力を練って身体強化をする。
 空間把握で広間内の人の動きを感じながらタイミングをはかり、――今だ!

 サクラがグラナダに十本のクナイを放つと同時に、俺とギリメクさんが跳び出す。俺がライムちゃん、ギリメクさんがシエラさんを助ける手はずだ。

 俺の方がギリメクさんより早くライムを抱き留めて、祭壇の向こうに飛び込み、ギリメクさんがシエラさんを抱き留めて、飛びすさった。

 グラナダは自らの周りに結界を張って、微妙にタイミングをずらして投げているサクラのクナイを笑いながら弾く。そして、結界内で指を弾いた。

「くくくく。生け贄は一人いればいいのです。代償はいただきますよ?」
 次の瞬間、ギリメクさんの体内から漆黒の槍が何本も体を突き破って現れる。

「ぐふっ」
 大きく血を吐いて倒れるギリメクさんに、目を丸くして叫ぶシエラさん。
「い、いやあぁぁぁぁ!」

 ヘレンが即座にギリメクさんに駆け寄る。グラナダが腕を突き出したのを見て、俺は即座にヘレンの前に割り込むと、5本の黒い槍が飛んできた。左手にライムちゃんを抱えながら、ミスリルソードに魔力を流してすべてをはじき落とす。

 それを見てグラナダが、おやっというような顔をする。
 次の瞬間、その背後にサクラが瞬間移動のように現れてグラナダに斬りつけるが、そのグラナダは幻のように消え去った。

「くくくく」
 祭壇の上にグラナダの姿が現れて面白そうに俺たちを見ている。

 ヘレンが、ギリメクさんのもとに行き、連続で回復魔法をかけている。いくども浄化の光と癒やしの光がギリメクさんを覆うが、その体から生えた黒い槍は消えることがない。

 俺とサクラはグラナダの動向に気を遣いながら、ヘレン達のそばに行く。
「どうぞ。最後の瞬間をお楽しみ下さいな。邪魔をするような無粋なまねはしませんよ」
とグラナダが冷たく笑って告げる。俺は、
「どうかな。お前は信用できない」
と言って、サクラにライムちゃんを預けて一人で前に出る。

 それを見て、ますますグラナダの笑みが深まった。
「まあ、最後まで見させて下さいな」

 その時、背後でギリメクさんが、
「し、シエラよ。俺はここまでだ。どうか、どうか幸せになってくれ」
と絞り出すような声を出した。空間把握で俺の背中越しに、シエラさんが泣きながらその体を抱きしめるのがわかった。ギリメクさんの目から涙がこぼれ落ちる。

「あ、愛す、る我が、む、娘よ。しあ……わ……せ」
 その言葉と共にギリメクさんの体から力がこぼれ落ちた。ギリメクさんの命の炎が消えていく。
「お、おと、お父さん! おとうさんー!」
 シエラさんが泣き叫ぶ。

 グラナダはその一部始終を眺めると、パチパチパチと拍手をした。
「う~ん。すばらしい。実にすばらしい愛情ですな」
 こいつめ。人の命を、ギリメクさんの命をなんだと思ってやがる!
 俺は、封印を解いた。

封印リミット解除。真武覚醒。戦闘モード:神装舞闘!」
 光があふれた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です