22 求め合う2人

 明日はいよいよこの町を出発する。
 体が冷える前に家の中に戻ってみんなで温かいお茶を飲むと、疲れが出てきたのか眠気が襲ってきた。
 明日に備えて寝ることにして、「おやすみ」と言ってそれぞれがあてがわれた寝室へと入っていった。

 不思議といざ寝ようとすると今度は目がさえてしまう。そこでランプを灯して窓辺に座っていると、みんなは寝ついたのだろう。家の中に静寂がおりているのが感じられる。

 ――トントン。
 不意にドアを控えめにノックする音がする。

 静かにドアを開けると、そこには夜着のローブを身につけたノルンが立っていた。
「どうした?」と尋ねると、
「ジュン、……いいかしら」と言って部屋に入ってきた。

 ノルンの美しい白い肌がランプに照らされている。どことなく緊張しているようだが、それは俺も同じだ。
 俺は窓辺のイスに座ると、ノルンは落ちつかなげにベッドに腰掛けて向かい合った。

「ヘレンはもう寝たのか?」とノルンと同室のヘレンの様子をきくと、
「う、うん。もう寝たわよ」
とぎこちなく返事が返ってきた。
「ね、ちょっと一緒に飲まない?」
とノルンは言うと、アイテムボックスから果実酒の瓶とグラスを二つ取り出して、俺の近くのテーブルに並べた。

 二人で小さな声で乾杯する。
 グラスに口を付けて果実酒を口にふくむと、フルーティな味わいと華やかな香りが鼻腔にあふれた。……これはおいしい。日本でもこんなお酒を飲んだことがない。

「これ。すごく美味しいな」
「でしょ? これねフレイ様のところのエルフがくれたのよ」
「へえ。エルフの秘蔵のお酒かな」

 ……会話が続かない。ノルンの顔に朱がさして、ものすごい色気がにじみ出している。その顔を見ているだけで俺の心臓がバクバクとしてくる。
 こんな夜に、一人で緊張しながら俺の部屋に来た。なぜかなんて言わなくてもわかるよ。ソウルリンクからも熱い気持ちが伝わってきている。
 俺は立ち上がってノルンの隣に座り直した。ノルンがビクッとして俺の顔を見つめる。

「なあ。ノルン。戦闘中だったけど、あの時はじめてお前を見たとき、俺はドキッとしたんだ」
「うん」
「今までヘレンやサクラが一緒にいたけど、どうしようもなく寂しいって時があった。体の中を風が通り過ぎていくような感覚。……ノルンもあるだろ?」
「ええ」
「だけどお前を一目見たときわかったんだ。あっ。この人だ。俺が探し求めていたのはって」
「……ジュン。それは私も同じよ。妖精王フレイから魂を分かちあう人がいるって教えてもらって、しかもエストリア王国のアルの街の近くで見たって言う」

 ノルンが熱を持った目で俺を見つめる。
「一年前だな。カローの森の妖精の泉だ」
「もう暗くなるってのに急にフレイが今から転移するぞっていうから、おかしいと思ったのよね。転移してみたら雨が降ってるし」
「あはは。そうだったな。降っていたな」
「……でもね。あなたに会えてわかったのよ。フレイのお節介だったんだって」
 俺はグラスをテーブルに置いて、そっとノルンの肩を抱き寄せた。ノルンもグラスを置いてゆったりと体を寄せてくる。
「感謝だな。妖精王フレイに。こんなに早くノルンと出会えた」
「本当ね」

 ぐいっとノルンを抱いたままベッドに押し倒して覆い被さる。俺の下のノルンを見て、
「愛してる。絶対に離さない」
と言うと、ノルンは下から俺の首にしなやかな腕を回して、
「私もよ。愛してる」
と言った。ランプが照らす寝室の中で二人の唇が触れあった。最初は軽く、すぐに情熱的に。

――――。
 求め合った後、並んでベッドに寝転びながら、俺は、
「……なあ、またちょっと飲まないか?」
「いいわよ。……でも。その前にそこにあるタオルを取ってくれない? ……その、シーツが汚れちゃうから」
「あ、ああ。ちょっと待ってろ」
 俺はノルンにキスをすると、ベッドから出てタオルを取って手渡した。
 ノルンはタオルを受け取ると、ベッドの中でごそごそしている。
 その様子を横目で見ながらグラスに果実酒を注ぐ。
 ノルンは器用にタオルを足の付け根に挟みながら、ベッドから下りて床に放り投げていたワンピースを拾って裸身の上にかぶる。

 ノルンのなめらかな素肌、Fカップと思われる形の良い乳房。それらがワンピースに隠されるのを惜しみながらも、その様子にたまらなく愛しい気持ちが湧き起こってくる。
 俺がじっと見ているのに気づいたノルンは、照れくさそうにハニカミながら、窓辺のイスに座った。ワンピースの裾から伸びる素足が色っぽい。

「はい、どうぞ」と言ってノルンにグラスを手渡して、窓枠に寄りかかる。
「ありがとう」と言ってグラスを受け取ったノルンが、俺を見上げる。

 二人で2回目の乾杯。
 俺はグラスを空にするとサイドテーブルにグラスを置き、ベッドの端に腰掛けながら、グラスに口をつけるノルンを見ていた。
 ノルンはいたずらっぽく微笑むと、おもむろに白銀でできた透かし彫りの美しいの髪飾りを取り外してテーブルに置き、まとめていた長い髪を解放する。そしてグラスを持って立ち上がると、俺の前にやってきて、グラスに指を入れて残った果実酒に指をつけ、その指で俺の唇をなぞった。
 ノルンは俺と目を合わせたまま手を伸ばしてサイドテーブルにグラスを置き、そのまま前屈みになってきてキスをしたまま、今度は俺がノルンに押し倒された。

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