とある主従のお話

――――。
どこともしれない白い空間。そこに数人の男女が集まっていた。

 「す、すびばぜん!」
純白の羽根を持つ少女が顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、白いローブを着た30代半ばほどの男性に謝っている。
男性はそっと少女の肩に手をやり、
「もう怒ってないから、そんなに気にするな」
と言うと、少女はがばっと顔を上げて、
「本当に怒ってないですか?」
と言う。
男性はどこからともなく白い布を取り出すと、少女の涙と鼻水を綺麗にふきとった。
「最初はなにやってんだ!って思ったけどね。……結果的に面白いことになっているみたいだし」
と言って、何かを思い出したように含み笑いした。

 男性の脇に控えていた黒髪の女性が、
「シン様はなんだか楽しそうですね」
とその隣の黒髪の男性に話しかける。黒髪の男性は肩をすくめると、
「ジュンたちを思い出したんだろ?」
と返事をし、
「イトだって、ヘレンの未来が楽しみなんじゃないか?」
と言う。イトと呼ばれた黒髪の女性は、図星だったようで、笑いながら、
「トウマだってそうでしょ?……今ごろは、ノルンでしたっけ?その女性とも出会っているころでしょ?」
とトウマに話しかけた。トウマは、
「ジュンは、時代が違うとは言え俺たちの同郷だからな。……できれば、こいつも渡してやりたかったが」
と言いながら、腰にさげた宝剣の柄を撫でた。イトがそれを見ながら、
「ふふふ。随分と気に入ったみたいじゃないの。草薙の剣をあげるなんていうと思わなかったわ」
と言う。トウマはイトに「まあな」と言って、シンと少女の方を眺めた。
「でもトリスティア様のミスだけど、そのお陰でジュンも孤独になることはないだろうから良かったよ」
と言う。イトは笑いながら、
「そうね。彼がいずれ成り立つ位置は唯一の座で、孤独のはずだったものね」
イトの言葉を継いだのはシンだった。
「しかし、同格のノルンが登場したお陰で孤独になることはない。……うらやましいね」
と言うと、少女が心配そうに、
「でも主様には私がいます。ウィンディもセルも」
と言う。シンは「もちろんトリスたちを忘れてはいないよ」と笑いながら少女の頭をぽんぽんと叩いた。

 少女に向き合っていたシンは、トウマとイトに振り返り、
「このトリスのミスで多少の問題はあったみたいだが、予定通りの関係を築きつつあるね。……あの女性もパティスのところへ行ってよかったよ」
と言った。すると、離れたところから銀髪の美しい女性が歩いてきて、
「いきなりいおりの前に現れたので、びっくりしましたわ」
と言う。トリスと呼ばれた少女が銀髪の女性を指さして、
「あっ。パティスだ。ありがとうね」
と声をかける。すると銀髪の女性パティスは片膝をついて、
「いいえ。大したことではありませんわ。トリスティア様。お陰で私も少し世界を見て回りたくなりました」
と言う。

 シンは、片膝をついているパティスに、
「ちょうど良いタイミングだったな。……もうそろそろアレが召喚されるはずだ」
と言うと、パティスが顔を上げて、
「たしか、その時にあの島は消滅するのでしたね」
と言う。シンはうなづき、
「そうだ。……だが、私の計画には必要なことだ」
と言った。そして、パティスに向かって、
「助かったぞ。パティス。ノルンを鍛えてくれて。……お陰でジュンが孤独にならずにすみそうだ」
と言う。パティスは深く頭を下げ、
「もったいないお言葉です。創造神様よりそのようなお言葉を賜るとは」
シンは笑いながら、
「ふふふ。それにしても見事に良い娘ばかりが集まっていくな」
と言うと、トリスが、
「はいは~い。……主様。彼に「愛をもたらす者」と「ハーレムの主」の称号を加えておきました!」
と言って、えへへと笑う。シンはその頭を撫でながら、
「よくやったぞ。私の都合とは言え、折角こっちに招待したんだ。楽しんでもらわないとね」
と言う。
トリスは顔を上げて、
「それに彼女たちが眷属になりますよね」
と言った。

 シンはトリスの言葉にうなづくと、トウマやパティスたちの方を向いて、
「スサの勇士トウマにツクヨミの聖女イト。そして、初代聖女パティスよ。……お前たちにはジュンたちを導いてもらうぞ」
と言い放つと、トウマとイトもパティスに並んで片膝をつき、
「「「かしこまりました」」」
と言上した。シンはつづけて、
「オメガまでに力をつけてもらわねばな」
と言うと、そばのトリスと呼ばれた少女が、
「もうすこしで主様と一緒にいられますよね」
とにこやかに言うと、シンは笑いながら、
「ああ。ウィンディとセルも一緒に漫遊記なんてどうだい?」
と言った。トウマが、
「シン様。それでは今と変わらないです……」
と言うと、シンは大笑いした。「あははは。そうだったね」

 しかし、その横でトリスはキラキラした笑顔を見せながら、
「バハムーちゃんはダメですか?」
と言うと、シンは首を振って、
「竜王には役目があるからダメだよ。……まあ、彼らが別の守護神を創れば別だけどね。それにいつだって遊びに行けるだろ?」
と言うと、トリスは、
「そうでした!早速、遊びに行ってもいいですか?」
シンは歩き出そうとするトリスの手を慌ててつかまえて、
「いやまだダメだよ。……ほら竜人族の女性が彼の仲間にいるだろ?あれを鍛えてもらわないと」
と言った。トリスは残念そうに、
「そうでした。……あっ。そうだ!私、そろそろ例の調整に行かないと!」
と言う。シンはうなづくと、
「トリスティア。よろしく頼むぞ。アレは今回の計画の肝になるからな」
「はい!かしこまりました!……では、行ってきます!」
とトリスは光と共にどこかへ消えていった。
残されたシンは面白そうに空中を見上げると、
「ふふふ。美人の眷属と一緒に早く力をつけてくれよ?ジュンくん。でないと、アレが始まっちゃうよ?」
とつぶやいた。

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