13 村人発見

 そのまま三〇〇メートルほど進むと、よりオークの気配が詳細にわかってきた。どうやら二匹のオークは分岐点にいるらしい。通路は緩やかなカーブを描いているが、このまま近づくとどうあっても気づかれてしまうだろう。
 幸いに結構洞窟の天井は高く、たいまつの光もそこまで届いていない。
 「忍術、空渡り」
 私は妖力を足の裏に集めて洞窟の天井まで飛び上がり、そのまま天井付近の空中を走りだした。

 二匹のオークの脂ぎった匂いが強くなり、分岐点が見えてきた。
 まさかここまで侵入者が来るとは思っていないようで、二匹のオークは地面に座り込んで何かをしゃべっている。様子をうかがっていると、一匹のオークが立ち上がって分岐路の一つを歩いて行った。……見張りの場所を離れていいのかな?
 まあ、私にはどうでもいいことね。
 早速、一人きりになったオークの目の前にすっと降り立ち、反応される前に首を刎ねた。
 そのまま周辺の様子を窺うが新たなオークが来る様子は無かった。そして、さっき一匹のオークが歩いて行った分岐路の先に複数の人間の気配を感知。きっと村人たちだね。
 私はとどめを刺したオークの血でやってきた通路に印を残すと、迷うことなくオークの進んでいった通路に入っていった。

 通路の先はゆるやかな下り坂になっている。
 進んでいくほどに人の匂いが強くなり、鉄格子が見えてきた。その前には二匹のオークがいて、さらに一匹のオークが鉄格子を開けて中に入ろうとしている。どうやら若い人間の女性の匂いに興奮して発情しているようだ。
 顔をしかめつつ、私は両手でクナイを放って通路から飛びだした。
 クナイは鉄格子前にいる二匹の目の奥に突き刺さり、のけぞった瞬間、忍者刀でのど笛をかっきる。
 血しぶきを上げて音もなく倒れた二匹のオークに、鉄格子の中の女性が金切り声を上げ、興奮して私に気がついていなかった最後のオークが振り返った。
 そのタイミングで素早くオークの首を刎ると、オークは何もできずに崩れ落ちた。
 私は女性達がこれ以上騒がないように、妖気を放出して金縛りをかけた。

 「きゃ………………」
 叫ぼうとした女性がその表情を固めて私を見た。オークの返り血を浴びている私だったが、なるべく平静を装って、
 「みなさん。落ち着いて。助けに来たから絶対に喋らないで」
という。女性達の目を見てどうやら理解したようなので、さっと金縛りを解除する。すると、女性達はその場にへたり込んで、
 「助かるのね?」「よかった」「……ああ、トリスティア様」
などとつぶやいている。
 オークの血の臭いが充満して吐いている女性もいるが、彼女らの服装を見るに、まだひどいことはされていないようだった。それでも殴られたかぶつけたかで、あざができている人がいるので、順番にけがを確認しながらヒールをかけていく。
 一人、二人、三人……、あれ?
 「もう一人いたと思うけど?」
ときくと、一人の女の子がさきほど連れ出されたという。……まずい!
 私はすぐさまマスターに念話を飛ばした。

 (マスター!村人たちを発見。確保しました)
 (よくやった!サクラ)
 (ですが、一人。女の子が先ほど連れ出されていったみたいです)
 (なにい!)
 (探しに行きます!)
 (待て!お前が行ったらその人たちはどうなる?)
 (それは……)
 (落ち着け。っと、俺の気配感知にも引っかかった。……上の分岐点まで女性を連れてきてくれ)
 (了解です)

 念話の途中で、私の気配感知にもマスターたちが来るのがわかった。
 「みなさん。救助隊が来ました。急いで脱出します」
と女性達に言うと全員がさっと立ち上がった。裸足の人もいるけれど、一刻も早くこんなところを脱出したいのだろう。
 私は女性たちの先頭に立って通路を上っていった。

 通路の分岐点ではマスターたちがすでに到着していた。
 私を見たマスターが、
 「よくやったサクラ」
 「いえ。それより女の子が……」
 「ああ。わかっている」
 マスターはそういってランド教官の方を見た。ランド教官は、
 「……行くんだな?」
とマスターの方を見る。マスターは、「ああ」とうなづいた。教官は、
 「わかった。ならば俺も行こう。……トーマスたちにはこの女性達の脱出についていってもらいたい」
と言った。それを聞いたトーマスが、慌てて自分の仲間達と相談をして、
 「教官。女性達はケイムとセレスに任せ、俺とルンとアイスも行きます」
 ランド教官は、それを見て、
 「まったく。……いいか。今までの感じから、事前情報と違ってオーク・ジェネラルがいる可能性が高い。あれはランクB相当で統率スキルを持っているんだ。……勝てるかわからんがいいんだな?」
と念を押すが、全員が「「「はい」」」と返事をした。教官は、「全員バカばっかだな」と自嘲した。
 マスターが、
 「それじゃ、ケイムとセレス。女性達を頼む。そして、洞窟の状態や俺たちが奥に向かったことも報告しておいてくれ」
と言うと、セレスが、
 「……わかったわ。でも無事で戻ってきなさいよ」
と言い、マスターと拳をあわせた。
 セレスはきびすを返し、
 「行くよ。ケイム。私らは私らの役割をきっちり果たす!」
と行って、女性を先導して通路を歩いて行った。

 彼女らが去って行った後、マスターが、
 「よし。これで後は暴れるだけだ!……サクラ。先行して女の子の安全を確保だ!俺らもすぐに行く!」
と私に命じる。
 「はい!」
 私は返事をして、すぐさま残る一本の分岐路へ突入した。

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