15 対オーク戦

 俺は、広場に入って目をむいた。
オーク達がステージ上の一角からの白い鞭の攻撃で悲鳴を上げている。
見ると、サクラの隣にいる白い少女、雪女か?が高笑いしながら鞭を振るっているようだ。
……なんだか俺の持つ雪女のイメージが崩れてしまいそうで、思わず、
「うお!……サクラ!やり過ぎだ!」
と口走ってしまった。
すぐにノルンにぽかりと後ろ頭を叩かれて我に返る。ともあれ、どうやら女の子はサクラと共に結界の中に保護されているようだ。

 一番奥がステージになっているようで、そこには一番大きなオークがこちらを睨んでいた。

――オーク・キング――
オークの王。戦闘力、生命力、知能、繁殖力のすべてにすぐれた個体。体型に似合わぬ機敏な動きで驚異の破壊力を持った攻撃をする。
分厚い皮膚と脂肪に守られ打撃も魔法も効果を半減する。ランクA相当。

 身長三メートルといったところか?でかいな。
あれに攻撃を届かせるには、このミスリルの片手剣よりロングソードが良いだろう。
俺は初めてフレイムエレメント・ソードを抜き放った。剣身から火の魔力がほとばしる。こいつを使いこなすには戦闘モード「火炎舞闘」が最適だ。

 「行くぞ!みんな!」

 俺の狙いはオーク・キングを抑えることだ。
剣に火の魔力をまとい、力業で目の前の群れに斬りかかる。剣から炎がまるで川の流れのように伸びていき、目の前のオーク達を焼いていく。俺はその火の流れの中を駆け抜けてステージに飛び乗り、オーク・キングと相対した。

――ノルン視点――。
ジュンが目の前のオークの群れを突っ切って、一気にオーク・キングのところまで駆け抜けていった。
ならば、それ以外の雑魚を倒すのは私たちの役目ね。
私はハルバードを構え、
「アイス!詠唱開始!ヘレンは祝福ブレスを」
と指示し、自らも魔法を放つ。
「サンダーレイン!」
オークの群れの頭上の何もない空間から、あまたの雷撃がガガガガと凄まじい轟音を響かせながら群れに襲いかかる。
「ぴぎゃあぁぁぁ!」
雷に打たれたオークが悲鳴を上げて次々に倒れていく。豚肉の焦げた匂いが漂ってくる。
つづいてヘレンが、
女神の祝福トリスティア・ブレス
と唱えると、仲間達の体が光に包まれ活力と勇気が湧いてくる。
私の隣のアイスが
「我がマナをかてに吹きすさび、刃となりて切り刻め。ウインド・カッター!」
と唱えると真空の刃が次々に放たれ、オークの体を切り刻んでいった。

 ランド教官が剣を掲げ、
「トーマス!ルン!シエラ!行くぞ!」
と叫んで、群れに斬りかかっていった。ランド教官を先頭に、まるでやじりのように三人が後ろに続いて突撃していく。
すでに雑魚のオークはほとんど倒れているが、四人の前に鎧と剣を装備した五匹のオークが立ちふさがった。

――オーク・ジェネラル――
剣技を使用し戦闘力の高いオークの将軍。知能も高く軍勢を率いている場合は要注意。ランクB相当。

 私のナビゲーションによれば、あの五匹はオーク・ジェネラルらしい。
できれば援護してやりたいが、前衛陣が全員行ってしまい、後衛を守る近接戦闘できるのは私くらいしかいない。
といっても今、私とヘレンとアイスの前には杖を持ったオーク・メイジが一〇匹並んでおり、魔法戦を仕掛けようとしているようだ。
「――――”#%$・&$&$」
オーク・メイジが詠唱を終えると、彼らの頭上に二〇本のフレイムランスが現れ、私たちに向かって飛んできた。
彼らに先手を許してしまい、フレイムランスが迫るなか、私は
「マナバリア」
と魔法障壁を張り巡らした。マナバリアにフレイムランスが次々に当たり炎をまき散らせる。
私の背後でハーフエルフのアイスが、「……また無詠唱で」とつぶやいているが、それを無視して、
「ストーン・バレット」
と唱え、石弾で狙いを済ましてオーク・メイジの額を打ち抜いてやった。

――サクラ視点――。
広場の中が乱戦になりつつある。
私は、お雪ちゃんに、
「アイリちゃんをよろしく。私も行ってくるわ」
と言うと、お雪ちゃんは手を振って、
「はいはい。この結界があれば私の仕事もないでしょうけどね」
と言う。私は青竜と白虎の忍者刀を両手に目の前のオークの群れに切り込んだ。
背後から、お雪ちゃんの、
「……は~い。アイリちゃん。お姉さんが守ってあげるわ。こっちいらっしゃ~い」
という楽しげな声が聞こえてきた。

 棍棒や錆びついた剣を振りかざしてくるオークの攻撃を見切りながら、一撃一殺、舞うように走り抜ける。
するとオークの影から、フォレストウルフが飛びだしてきた。
上下左右から一斉に飛びかかってくるのを尻目に、私は分身八ツ身を使う。飛びかかってきたフォレストウルフの間を八つの私がすり抜ける。次の瞬間、フォレストウルフは弾き飛ばされたように跳ね飛ばされ、ことごとく頭から血を吹き出して動かなくなった。

 私は、戦況が有利に動いているのを確認すると、オークたちとアイリちゃんとの間に立って警戒を続ける。

――シエラ視点――。
ランド教官を筆頭に四人でオーク・ジェネラルと戦っている。オーク・ジェネラルは単体でランクB。ランド教官と呼ばれる人と同じランクの強さを持っている。
バラバラで戦えばあっという間に押し込まれる。私はみんなの前に出て神竜の盾でオーク・ジェネラルの剣撃を受け流し、受け止め、防ぎきる。神竜王バハムート様にいただいたこの盾は、オーク・ジェネラルの攻撃にも傷一つつくことはない。
巧みに場所を移動して、オーク・ジェネラルに囲まれないように注意しながら、一瞬の隙を突いて、私の後ろからランド教官が一匹のオーク・ジェネラルの利き腕を切り飛ばした。
「スラッシュ!」
すぐさま、別のオーク・ジェネラルがランド教官に襲いかかるが、私が一歩前に出てそれを受け止める。と今度はトーマスが飛びだして、私が攻撃を受け止めたオークジェネラルの首元を狙って、五連突きを放った。
「五連!」
オーク・ジェネラルがたまらず後ろに下がる。ルンはその影で、ランド教官が腕を切り飛ばした一匹の首を刎てとどめを刺した。
これで四対四の同数だ。オーク・ジェネラルが縦に並んで、タイミングを少しずつずらしながら襲いかかってきた。
私は冷静にその動きを見て、最初のオーク・ジェネラルが剣を振り下ろした瞬間に盾で跳ね返す。
「シールドバッシュ!」
そのまま体当たりをくらわせると、オーク・ジェネラルはバランスを崩し、その後ろの三匹もタイミングを失って後退する。
その隙を狙い、ランド教官が戦闘の一匹の首を刎ねると、残り三匹のオーク・ジェネラルが動揺した。

 私は、右手の剣で神竜の盾を叩いて、オーク・ジェネラルを挑発する。
「そんな軽い剣じゃ。この盾の守りは抜けないよ!」

 私の挑発を受けてオーク・ジェネラルの目に力がこもる。今度は二匹で左右から同時に切り込んできた。
大きく一歩下がり、左右から同時に来る斬撃を上手く受け流す。ついで、左側に一歩踏み込んで、盾を無防備なオーク・ジェネラルの横っ面にたたき込む。
脳を揺らされたオーク・ジェネラルがたたらを踏むと、即座に左手からトーマスが、
「クロススラッシュ!」
と斬りかかった。オーク・ジェネラルは対応に遅れ、その右手をたたき切られると同時に頭をかち割られて崩れ落ちた。

 残り二匹。
再び挑発しようとした瞬間、横合いから、ノルンさんの「ストーンバレット」の魔法が炸裂し、二匹とも額を石弾に打ち抜かれてその場に倒れた。

 私は、
「思ったよりあっけなかったですね」
と言いながら、ステージ上に残るオーク・キングとジュンさんの戦いを見上げた。

――ジュン視点――。
オーク・キングが右上からスラッシュを放ってきた。
俺はその剣閃にあわせて剣を跳ね上げオーク・キングのバランスを崩し、そのまま魔力を込めて袈裟斬りに切りかかる。
オーク・キングはその一撃を受け止めたが、魔力はそのまま空飛ぶ刃となってオーク・キングに襲いかかった。
しかし、オーク・キングはとっさにバックステップして離れると、反対側の手を握りしめ飛んでくる剣閃を横から殴りつけた。剣閃は「バチィ」と音とともにはじけ飛ぶ。
それを見て思わず、
「無茶苦茶やりやがるな」
とつぶやいてニヤリと笑う。面白いじゃないか。これがランクA相当か。
オーク・キングがぐんっと踏み込んできて大上段から剣を振り下ろした。俺はそれを斜めに受け流すとそのまま横一閃の切り払いに切り替わる。バックステップで避けると、その横一閃の空飛ぶ半月状の刃となって飛んできた。無造作に剣を切り上げてその斬撃を断ち切り、距離を取ってにらみ合う。

 ステージ下では戦いが終わったようだ。残るはオーク・キング一人だ。

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