19 海神の聖石

 落ち着いたところで、海神セルレイオス様がいろいろと教えてくれた。
 海神様たちから見たら、半神半人の称号を持つ俺たちは後輩に当たるらしい。つまり、神船テーテュースは先輩から後輩への贈り物のつもりだそうだ。
 う~ん。やっぱり神様はスケールが違うんだろうな。贈り物で神船だとはね。
 ちなみにセレンに対する命令は、単純に自分の子孫を俺に縁組みさせるのが目的のようだ。
 本人の気持ちはどうなんだ? と思ったが、それを指摘するとセルレイオス様はニヤニヤと笑うだけで何もおっしゃられず。なぜかあれからセレンの機嫌がいい。……せぬ。

 さて俺たちの流れ着いたこの島だが、セルレイオス様の聖域への入り口に当たるために島全体が神聖結界に覆われているそうだ。
 もっとも実際に聖域に行くためには碧洋の瞳が必要となる。とはいっても、今までも海底王国のミルラウスで王位継承が行われる時に、前王と新王が訪れるくらいだったそうだ。
 俺たちの入手した碧洋の瞳は、セルレイオス様が使徒を使ってミルラウスに戻させるとのことで俺たちの手からは離れることになった。ちなみに俺とノルンが聖石の力をストーンサークルにそそげば、いつでもこの聖域に来ることができるとのこと。
 島を別荘あつかいするのは許可していただいた。島に村とか町とか国を作らなければ構わないということだ。これで転移魔方陣を設置して、アルの街のホームと行き来が自由にできる。
 いやあ。地球では別荘なんて夢のまた夢だったから、すごくうれしい。しかも南国のコテージ。魔法万歳。ノルン様々(さまさま)だ。

 「さてと顔合わせも終わったから本題に入るとしよう」
とセルレイオス様がおっしゃると、俺たちは別の場所に転移した。視界に見える景色がギュルギュルと流れ、たどり着いた先は不思議な空間だった。
 わずか直径一五メートルほどの空間の中央に白い台座があり、その一番上にキラキラと青い光を放つクリスタルのような八角柱の宝石が鎮座してあった。空間の外側はよく見えないが、どこまでも白い空間が広がっているようだ。
 どことなく雰囲気が、ヴァルガンドに来るときに経由した白い実験室のような部屋に酷似している。
 「こ、ここは」
 呆然と周りを確認し、ノルンたちもいたことに安心する。……よかった。今度は一人じゃない。
 目の前のセルレイオス様が、
 「うむ。ここは神域にあるわれのプライベート空間だ」
と教えてくれた。……神域? じゃあ前のあの部屋もか?
 セルレイオス様は中央の台座に近寄ると、俺とノルンを手招きした。
 「ジュンとノルンは近くに寄れ。その他の者は周りに並ぶがよい」
 「「はい」」
 俺とノルンはセルレイオス様の指示の通り、中央の台座を挟んで向かい合う。
 目の前の八角柱の宝石を見ながら、その石に込められた力の濃さを感じることができた。
 「聖石とすでに融合しているお主らなら、この石の力を感じられよう。……こいつは我が今まで力を込めてきた我の聖石なる」
 「セルレイオス様の?」
 「さよう。神格を得てより込めてきた力の結晶である。さあ二人とも両手をこの聖石にかざすのだ」
 「は、はい」
 中央の青く光る聖石に向かって、俺とノルンは恐る恐る両手を挙げてかざす。それを確認したセルレイオスが右手を挙げると、中央の台座を中心として仲間達が立っているところまでがぐるぐると回転を始め、中央の聖石が激しく光り始めた。
 まばゆい光に目がくらむ。何か力強くも温かい波動が体に流れ込んでくる。ゆっくりと回転が止まり光がおさまると、目の前にあったはずの台座から青い聖石が跡形もなく消滅していた。
 「なっ? 聖石が」
 いったいどこに行ったんだ? あわてて周りを見回した。
 セルレイオス様が少し疲れたように、
 「うむ。成功だ。……無事に聖石がそなた二人に取り込まれた」
 はあっ? 思わず声を上げそうになるのを抑えて、目をつぶり自分の体内を探る。……確かに今までになかった不思議な力の波動を感じる。温かいようで冷たく、静かなようでうねる力の波動。……そうか。これがセルレイオスの神力。まさしく海そのもののエネルギーといえるだろう。
 目を開けて、台座を挟んでノルンと目を見合わせる。同時に目を開けたノルンがうなづいた。
 俺とノルンはセルレイオス様の方を向いてひざまづこうとした。
 するとセルレイオス様は、
 「いやいや。それはよい。……我が主よりこれからのそなたに必要とのお言葉だったからな」
 思わずセルレイオス様を見上げて、
 「我が主ですか?」
と問いかけると、セルレイオス様はうなづき、
 「そのとおり。……そなたら心せよ。そうしてまで力をつけねばならない敵が、いずれ現れる。我の聖石も、そなたらのもとの聖石と一緒で完全に融合するまでに鍛錬が必要となろう。聖石の力に一刻も早く習熟せよ」
おおせられた。
 「「はい!」」
と異口同音に返事をすると、セルレイオス様は周りの仲間たちに、
 「そなたらにも少しずつ力が行きわたったはず。しっかりと鍛錬に励め」
と声をかけられた。
 それにしても聖石の力が必要な敵、か。それはもしやグラナダのことだろうか。それとも……。
 ひざまづいたままで考え込んでいると、セルレイオス様がやさしく肩を叩き、
 「それでは島まで転送しよう。とりあえずルーネシアを目指せ。……またいつでも来るが良い」
とおっしゃられ、俺たちがお礼を言う前に再び強烈な光に包まれた。
 くらむような光に包まれながら、
 「ありがとうございました。海神セルレイオス様!」
と大きく叫ぶのだった。

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