24 発進! テーテュース!

――――。
「ああ! マスター!」
スクリーンでジュンたちの戦いを見ていたサクラが叫んだ。

 ヘレンは胸の前に両手を組んで祈っている。シエラはただじっと上空にいるローブの人物をにらみつけていた。
三人の様子を見ながら、セレンはぎりぎりと歯をかみしめる。
「私たちにできることはないの?」
誰にともなくそうつぶやくと、サポートシステムが、
「支援手段を模索します。処理中……。処理中……。神竜王のブレスレットを船内に発見」
にわかにヘレンとサクラとシエラのブレスレットが光り始めた。
「な、なに?」
と戸惑う三人だったが、サポートシステムは、
「神竜王のブレスレット励起。空戦モードへ変形します」
と続ける。
船体の両側からドラゴンのような翼が伸びていき、船体全体が海面より浮かび上がる。
セレンが驚いているうちに、
変形トランスフォーム。テーテュース、浮上します」
とシステムが告げる。
「ちょ、ちょっと船が浮いてるわよ!」
ヘレンが驚きの声を上げると、セレンがにっこり笑って、
「そうみたいね。あなたたちの神竜王のブレスレットのおかげみたい」
「どういうこと?」
セレンは楽しそうに、
「ふふふ。私にもよくわからないわ。……何しろ神様のすることですもの」
「そう。……それもそうね」
妙に納得した様子のヘレンに、スクリーンを見ていたサクラとシエラが、
「す、すごい! 飛んでる!」「あわわわ。落ちたりしないかな」
と騒いでいる。ヘレンが、
「大丈夫だから、二人ともしっかりしなさい」
と強く言うと、二人とも「「はいぃ」」と返事をして改めてスクリーンのムシュフシュを見つめた。
サポートシステムが、
「船長室を戦闘指揮所に展開します」
と言うと、正面の舵が床下に引っ込んでいき、代わりに四つのイスがせり出してきた。中央に一脚、正面と左右のスクリーンの前に一脚ずつだ。
「各イスに着席願います」
というサポートシステムのアナウンスに従って、中央はセレン。正面のスクリーンにはヘレン、左はサクラ、右はシエラと分担して座った。
「戦闘指揮はセレン様。火器管制はヘレン様。航行制御はサクラ様。周辺警戒はシエラ様となります」
アナウンスとともにそれぞれの正面のスクリーンに担当する情報が表示される。
シエラが、
「敵影。五キロメートル先みたいです。気圧低下。八五八、八五〇、八四七……」
つづいてサクラが、
「結界に異常は無いです。残エネルギー八〇%。……うふふ。これは興奮しますね!」
するとヘレンがあきれたように、
「サクラったら……。そんなことよりさっさと二人の支援に行きましょう」
と言うと、セレンが、
「その通りね。テーテュース、発進!」
と告げる。
シエラがレーダーを見ながら、
「敵影を補足。……これはドラゴンでしょうか?」
と言うとサポートシステムが、
「いいえ。やはりヴァルガンドのデータベースに一致なし。船長ジュンとのソウルリンクに干渉。……該当データ発見。暴風竜ムシュフシュ」
と告げる。
正面のスクリーンにムシュフシュの姿が大きく映し出され、ヘレンが、
「火器武装、表示。……はぁっ? なにこのリストは」
と驚きつつ、「波動砲装填」と指示すると、サポートシステムが、
「波動砲。チャージします」
と告げる。スクリーンには船首がぱかっと割れてそこから巨大な砲口が現れる様子が映し出される。
サクラが、
「エネルギー注入。全エネルギーの二〇%を回します」
と言うと、船全体が不気味に振動をはじめ、キュウゥゥゥゥゥと低周波の音が聞こえてくる。
ヘレンが、
「波動砲。エネルギー充填、七〇%、八〇%、九〇%、一〇〇%! セレン! トリガーを渡すわよ!」
と言うと、セレンが、
「了解。照準をムシュフシュに固定。……波動砲。発射!」
と叫ぶ。ものすごい揺れが船をおそい、船首から真っ直ぐに極太の波動砲が青白い光となって発射され、正面のムシュフシュに襲いかかっていった。

 「ギュイイィィィィ!」
悲鳴をあげながらも、その波動砲はムシュフシュの体を半ばから断ち切った。尻尾の方が下の方へと落ちていく。
もだえていたムシュフシュのあぎとがこちらを向き、その喉の奥に黒い光が集まっていく。
モニターを見ていたシエラが、
「行けない! 瘴気の波動が高まっていきます! 攻撃、来ます!」
と叫ぶと、即座にセレンが、
「結界出力一〇〇%!」
と言い、サクラが復唱する。
船を覆う光が強くなっていくと、そこへムシュフシュの放った黒いドラゴンブレスが押し寄せてきた。
船が不気味に振動しつつも結界がムシュフシュの攻撃を耐えている。スクリーンが明滅し、衝撃が船体をビリビリと揺らしている。
サクラが、
「損傷箇所0。防ぎきったけど、残エネルギー四〇%に低下!」
と叫ぶ。

 正面のスクリーンには、体を断ち切られながらもテーテュースの方を向くムシュフシュの姿が大きく映し出されている。
サポートシステムが、
「ジュン様より念話。つなぎます」
「おい! 大丈夫か? 下で待機してろって言ったろ!」
そこへヘレンが、
「見ているだけなんてできるわけがないでしょ!」
と怒鳴り返す。
「いいから、ここは俺とノルンに任せろ!」
というジュンに、セレンが、
「残念だけど、その命令にはしたがえないわ」
とつぶやくと、ヘレンたちも、
「そうよ!」「あったり前です!」「もちろん」
と同意する。が、そこへムシュフシュが突進してきてテーテュースの結界に激突する。
船が旋回しながら勢いを殺しきれずに海へと落ちていった。
「「「「きゃああぁぁぁぁぁ」」」」
しかし、サポートシステムが、
「船体損傷率一〇%。体勢を安定化させます。……自動修理開始。安定化処理完了。ゆっくりと着水します」
と告げ、テーテュースは海へと着水し、大きな水柱が空まで吹き上がった。

 降り立った海域には波間からいくつもの光がのぞいていた。嵐の暴風でよく聞こえないが、海の中から歌が聞こえる。
テーテュースから離れたところで、海竜王の巨大な頭が海より出てきて、ドラゴンブレスのチャージに入る。
「ゴオオオォォォ」
海竜王リヴァイアサンのドラゴンブレスが、ムシュフシュとは別の空の一点へと伸びいていき、何かにぶち当たった。
海面を飛び出して、何本もの光の槍が上空のムシュフシュに向かって飛んでいく。
叫ぶムシュフシュが蛇身をくねらせた。

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