31 荒野の決戦 3

――――。
 上空では、雲の間を二つの影が入り乱れ、ぶつかり合っていた。
 一つは影のグリフォン。もう一つは、ガイアとその背に乗るシエラだ。
 ガイアの背に乗るシエラが強い風に包まれている。
 時には強いGがかかるが、竜の眷属である竜人族のシエラはそれに耐えている。

 二匹の戦いは拮抗していた。
 パワーのガイアに、スピードのグリフォン。
 もともと体格が違う上、ガイアは地竜王の名前が示すとおり、他の竜王に比べて空を飛ぶのが得意ではなかった。……パワーならば強いのだが。
 対するグリフォンはスピードがあり、巧みに空を飛んでガイアの攻撃をよけ、鋭い爪で反撃をしていた。
 しかし、いかな鋭い爪とはいえ、ガイアの竜鱗を切り裂くことはできない。

 ガイアが、細かなブレスをタイミングをずらしながら五連発する。
 しかし、飛来するブレスを縫うようにグリフォンは空を飛ぶ。外れた五つのブレスが、遠くの山に当たり、爆発が大きな柱のように立ち上る。

 「こいつめ! ちょこまかと……」

 ガイアはうなりとともに影のグリフォンをにらみつけた。
 その視線の先で、影のグリフォンは激しく翼をはためかせると、力を込めるように前足をかがめた。
 怪訝な顔でその様子を見たガイアは、すぐさま警戒する。

 「ぬ?」

 すると、グリフォンは、先ほどのブレスのお返しとばかりに、そのくちばしから大きな火球を放った。タイミングをずらして五連発。

 「こしゃくな奴め!」

 その火球を避けようとするガイアであったが、その巨体があだとなったようだ。ガイアの右脇腹と左足に大きな爆発が起きる。すぐに煙が風に吹き飛ばされるが、むろん竜鱗には傷一つついていない。
 しかしわずかな隙を突いて、グリフォンがすさまじいスピードで突進してくる。
 嘴を先頭にらせん状に回転し、あたかもドリルのように一直線にガイアの腹部に激突した。

 ギイイイイイイィィィ!

 何かをうがとうとするような、すさまじい音がする。と、そこから赤い血潮があふれた。

 回転し続けるグリフォンをめがけて、ガイアが横から右手で殴りつける。
 ドゴオオ!
 その衝撃に、ガイアの体に穴を開けようとしていたグリフォンは吹き飛ばされた。
 ガイアの腹部には、砕けた竜鱗と血が流れている。とはいえ、それほどのかすり傷程度のわずかな傷で、それも見る見るうちに回復して行っている。
 ガイアは忌々しげではあるが、面白くなってきたといわんばかりに口元をゆがめて笑っている。

 「ふん! いまいましいが、スピードは奴が上か」

 互いに離れ、牽制しあいながら次の一撃の機を待つ二匹。
 シエラは、何もできずにガイアの背中にしがみついているだけだ。

 「丁度よい機会だ。シエラよ。竜王の本当の戦いを見せてやろう」

 その言葉が終わった途端。ガイアの雰囲気が一変した。
 全身から黄金色のオーラが発し、威圧感が倍加する。いいや、実際にパワー、スピード、回復が倍加しているのだ。
 この黄金色のオーラをまとった姿こそ、本来の竜王の戦闘モードなのだ。

 「シエラよ。これが竜闘気ドラゴニック・バトルオーラだ。……本来、我らの子孫でもあるお前たちにも使えるはずの能力だ」
 「竜闘気ですか?」
 「そうだ。……俺の竜闘気をお前にも送るから、その感覚を覚えておけ」

 ガイアの言葉とともに、黄金色のオーラがシエラの体を包む。その力の奔流に、シエラは驚くと共に、自らの体が活性化しているのに気がつく。
 その力は、ガイアをつかんでいる両の手と足から伝わり、一度、丹田の位置に集まると、一回り力が大きくなり、そこから全身の細部のあちこちまで力が行き渡り、ふたたび丹田、手足を通ってガイアへと戻っていく。まるで、ガイアの血液の流れに取り込まれたかのようだ。
 シエラの脳裏に、デウマキナの洞窟での戦いの時、父ギリメクの体をおおっていた黄金色のオーラが浮かんだ。あの時、父は竜闘気に目覚めていたのだ。

 「この竜闘気は竜魂が源だ。竜魂とは、心臓のような臓器ではない。魂の一部とでもいうか、竜の竜たる遺伝子の根源ともいうべきものだ。……おそらく俺のオーラがお前の体内で集まる
一点があるだろう。それが竜魂だ。お前は、まずこの竜闘気を自由に発動できるように修行せよ」

 ガイアは、簡略にシエラに語った。
 竜闘気。竜魂。シエラの知らない能力が明かされるが、どのようなものかさっぱりわからない。しかし、どうやらシエラの場合は丹田に位置するのであろう。修行のヒントは与えられた。後はシエラ自身の努力が必要だ。憧れた父の背中に追いつき、そして、追い越すために。

 「……必ず。発動できるようになります!」

 シエラは、力強くガイアにこたえた。ガイアは、満足そうにすると、油断することなくグリフォンを見やる。
 ガイアの雰囲気が一変し威圧が増したことから、グリフォンは警戒して様子をうかがっていたようだ。

 「さて、と。では竜闘気の闘いを見よ。……まずは奴の動きを止める。ストーン・ストーム」

 無詠唱というわけでもない。たとえて言えば、単なるイメージによる超常現象の発動だ。
 ガイアの目がきらりと光る。影のグリフォンの周りに大小さまざまな石つぶてが現れ、グリフォンを中心としてランダムに暴れ回る。
 グリフォンは四方八方から飛んでくる石つぶてに、思うように空を飛べなくなっている。 グリフォンの苦し紛れの声が響く。
 その声を尻目に、ガイアは一つ空高く飛翔すると、眼下のグリフォンをにらんだ。

 「そしてこれが俺の技。大地の力を顕現する技だ。……メテオ・ストライク!」

 技の名前を言い放った途端。ガイアは体をかがめる。そのガイアを中心に圧力が高まるように、魔力、いや竜闘気が集まる。あたかもガイアをおおい尽くす彗星のように濃いオーラを身にまとい、一気にグリフォンへ突進する。
 ガイアは、グリフォンもろとも数百メートルはある地面へと一直線に急降下し、そのまま大地に激突した。
 ドドドドドドドド……。
 ものすごい地響きと、激突の衝撃で土が巨大な柱のように立ち昇る。
 土煙が風で吹き飛ばされた後には、直径100メートルほどのクレーターの中に、何ごともなかったかのようにガイアが鎮座し、影のグリフォンは塵と消えてしまっていた。
 そして、一帯には、ガイアの勝利の雄叫びが響き渡る。
 「グオオオオォォォォ!」

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