17.村での生活

 ヒロユキとコハルがダークエルフの集落しゅうらく滞在たいざいゆるされてから、二週間にしゅうかんった。

 滞在たいざい許可きょかのかわり、二人ふたりには午前中ごぜんちゅう神官しんかんフローレンスの指示しじで、祭壇さいだん掃除そうじやそのほかの雑用ざつようをこなすことになった。

 おひるからは自由時間じゆうじかんだが、いつかもりから出てロンド大陸たいりくもどるために、たたか訓練くんれんをしている。

 ……私は、いつもどおり二人を見守みまもっている。ダラダラしているともいうけど。

 ここは森の深部しんぶらしく、大きな木々きぎ集落しゅうらくがうもれているように見える。

 本来ほんらい危険きけん魔物まものがたくさんいてもおかしくはないそうだけど、れい結界けっかいまもられているようだ。

 その分、集落しゅうらくの外にりに行くダークエルフにはつよさがもとめられている。

 そのうえ、見たところ、大体だいたい、4~6人のグループをつくってかけている。

 ヒロユキとコハルはらないことだけれど、ダークエルフたちは魔法まほう達人たつじんのようね。

 たまにつよ魔力まりょくたかまりをかんじることがあるわ。

 つよさはだいたいリリーと同じくらいで、風と水の魔法まほうをおもに使つかっているようね。

 神官しんかんのフローレンスのいるところは、どうやら神殿しんでんばれているらしい。

 今日もその神殿前しんでんまえ広場ひろばで、ヒロユキとコハルが訓練くんれんけている。

 「えいっ!」

 可愛かわいらしいこえで、コハルがつえをフローレンスにき出した。

 フローレンスがそれを左手ひだりてこう外側そとがわしのけて、右足みぎあしまわしげりをはなつ。

 ……もちろん、手加減てかげんして。

 コハルがそのまわしげりをかがんでかわして、ふたたびつえき出す。

 フローレンスが一回転いっかいてんして、ひだり足払あしばらいでコハルの足下あしもとをなぎはらう。

 コハルがかわせないで、そのでひっくりかえった。

 そこへフローレンスのストレートパンチ。

 「ひうぅ」とこえを上げるコハルの目の前で、フローレンスのこぶしまった。

 ……う~ん。コハルは正直しょうじきにいって、直接ちょくせつたたかうのは無理むりそうよ。

 魔法まほう勉強べんきょうをして、リリーのように魔法使まほうつかいになる方向ほうこうでいったほうがいいわ。

 ……ただねぇ。ヒロユキと二人でロンド大陸たいりくまでくことをかんがえるとなぁ。

 わたしだって、かくれてでないと手助てだすけできないし。

 いや、まてよ。またべつ召喚獣しょうかんじゅうび出すって手もあるか?

 木の下にすわって、かんがえごとをしていると、またべつところではヒロユキがけんでファミーユと訓練くんれんをしている。

 「せいっ!」

 するどいごえでヒロユキがりかかるが、ファミーユはそれをナイフでながし、ひじでヒロユキをばす。

 「ぐぅ」といながら、ヒロユキはあしみしめ、けんき出した。

 が、ファミーユは上半身じょうはんしんかがませてよけて、そのままヒロユキのあごをき上げた。

 たまらずヒロユキはそのにしゃがみ込んだ。どうやらからだに力が入らないようだ。

 ふふふ。頑張がんばれ。ヒロユキとコハル。

 私は、んでいた山で銀狼ぎんろうのフェンをきたえていたときのことをおもい出した。

 フェンったらむしだったから、反撃はんげきするとすぐにき出しちゃったのよねぇ。

 ……それにくらべれば、ヒロユキもコハルも頑張がんばっているとおもう。

 まだ成長途中せいちょうとちゅうからだだから、体の鍛練たんれんよりも体内たいないでの魔力まりょく使つかかたとか、体のうごかしかた技術ぎじゅつにつけるのがベスト。

 もっともこのことは、二人をきたえているフローレンスもファミーユもわかっているみたいね。

――こうしてさらに一週間いっしゅうかんったころ、二人はたまに、ダークエルフの狩人かりうど一緒いっしょ結界けっかいの外にでて、もり魔物まものたたかうまでになった。

 もちろん、見守みまもられながらだけどね。

 今日もまた、りからもどりフローレンスとファミーユと一緒いっしょ夕飯ゆうはんべた。

 食べわったらファミーユが「また明日あした」と言って、自分じぶんいえかえっていった。

 フローレンスはまだ仕事しごとがあるということで、ヒロユキとコハルもりている小屋こやもどることにした。

 神殿しんでんの外で夜空よぞら見上みあげると、もう少しで満月まんげつになろうとしているつきが、うつくしくひかりはなっている。

 コハルが、

 「うわぁ。今日のお月さま、すごいきれい。……ね、ヒロユキ。ちょっとながめてからかえろうよ」

というと、ヒロユキが、

 「明日も早いけど、……まあ、いいか」

とうなづき、神殿裏しんでんうらにある大きないわに二人でならんで腰掛こしかけた。

 「もう三週間さんしゅうかんかぁ」

 そうつぶやくコハルに、ヒロユキが、

 「もっともっとつよくならないと、みんなのところにもどれないさ。あせっても仕方しかたない」

 コハルが物憂ものうげに、

 「でも、私たちが無事ぶじってつたえられないかな? きっと心配しんぱいしているよ?」

というと、ヒロユキもうなづく。

 「気持きもちはわかるけど、無理むりなものは無理むりさ。おれたちがもっとつよくなるしかないよ」

 「そっか……。うん。そうだよね」

 そういってコハルはいわの上にごろんとよこになってそら見上みあげた。ヒロユキもならんでよこになる。

 コハルが、

 「あ~あ、なんでこんなことになっちゃったんだろう?」

とつぶやいた。私は尻尾しっぽでそっとコハルのほっぺたをなでた。

 コハルがくすぐったそうに、

 「ふふふ。ユッコ。なぐさめてくれるの?」

 私は、ならんでいる二人のあたまのそばにすわると、片方かたほうずつの前足まえあしを二人のおでこにせた。

 ヒロユキが、「うわっ。おれもか」とかいっているけど無視無視むしむし

 つめめてあるから、肉球にくきゅうかおをプニプニしてやった。

 「わ、わふ」「こ、こら」とかいっている二人が、おたがいにわせ、一呼吸置ひとこきゅうおいて笑い出した。

 「「あはははは」」

 ヒロユキが上半身じょうはんしんこして私を見る。

 「ユッコ。ありがとうな。……コハルも」

と、めずらしくおれいうと、コハルも体育座たいいくすわりになって、

 「ううん。私こそ。……こんなときに一人じゃなくって本当ほんとうかったよ。ヒロユキとユッコがいてくれるから、くじけないでがんばれてると思う」

 「そうだな」

 岩の上の私たちを月があたたかく見守みまもっていた。

 しばらくそんな会話かいわをしながら月をながめていると、ヒロユキが、

 「あれ? あそこ、なんかへんじゃない?」

と言う。

 ゆびをさしたところを見ると、そこだけほたるみたいな小さなひかりがいくつもっている。

 コハルはそれを見て、

 「うわぁ。きれい」

とうっとりしている。

 二人はいわりて、その小さな光がっているくさむらの一角いっかくに行くと、そこには一つのいしいてあった。くろい石の表面ひょうめん金色きんいろ模様もようほどこされている。

 なにかの宝石ほうせきか、魔導具まどうぐ一種いっしゅに見えるけれど。

 コハルがしゃがんで、

 「これってなんだろう?」

と石をつんつんとさわった。

 ……ああ、コハル。そんなにうかつにさわったら危険きけんよ。

 ところが、ヒロユキもしゃがんだと思ったら、大胆だいたんにも石をひろい上げた。

 そのままヒロユキののひらのいしを、二人がのぞき込んでいる。

 ちょ、ちょっと、やめなさいってば!

 私が尻尾しっぽでたたきとそうとしたとき、真上まうえから一条いちじょうの光がりてきて、その石にたった。

 「うわぁ」「な、なんだ?」

 ヒロユキの手の中の石がぼんやりと光りはじめた。

 ぶううぅぅん。

 なにかが起動きどうするようなおとがして、私たちをかこむように光のはしらがあらわれた。

 不意ふい足下あしもと感触かんしょくくなる。

 地面じめんえているわ!

 ヒロユキとコハルはあわててあなのふちにつかまろうとするが、私たちはその穴にちていった。

 プールのすべだいのように、まるいトンネルの中をちていく。

 「きゃああぁぁぁぁぁ」

 「うわあぁぁぁぁぁぁ」

 二人のさけごえがトンネルの中をこだまするのをきく余裕よゆうもなく、地下ちかふかいところへとどんどんすべちていった。

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