31.エピローグ

 「ただいま! フェン。元気げんきにしてた?」

 わたし異世界いせかい転移てんい魔法まほうで元の世界せかいもどると、ちょうどそこに銀狼ぎんろうのフェンがいた。

 「ユッコ! ユッコユッコユッコ」

 おどろいたフェンがわたし名前なまえ連呼れんこしながら突進とっしんしてくる。

 ちょ、ちょっといて、ね?

 「心配しんぱいし……、いや心配しんぱいはしてなかったけど。どこ行ってたんだ?」

 「ちょっと異世界いせかいまでね」

 「はあ? 異世界いせかい? ……ユッコならありうるか?」

 すっとんきょうなこえを上げたフェンだったが、みょう納得なっとくしたようだった。

 「でね。フェン。ちゃんといてね。……わたしね。こうの世界せかいでもお友達ともだちできたから、これからこっちとこうとして生活せいかつすることにしたの」

 「え? ちょ、ちょっとまてよ? じゃあ、ここのユッコのいえはどうすんの?」

 「いないあいだはあんたが管理かんりしなさい。みんなのリーダーもよ。いい?」

 フェンはいやそうに、

 「えー! めんどくさい。……けどわかったよ」

う。

 「だってよ。古代竜エイシェント・ドラゴンのじいさんがんじゃってから、いなくしたみたいに、ユッコんでたもんな。……おれはそんなユッコも見たくないし。今はきしているみたいだ」

 そっか。フェンのくせにわたしを見ているじゃないの。

 ちょっとずかしくなったわたしは、かくしで、

 「というわけで、すぐにこうに行くから、あんたの子供こどもを見せなさい。……もうまれたんでしょ?」

 「……なぜってる?」

 「こたえはわかってるでしょ?」

 するとわたしとフェンのこえかさなった。

 「「わたし(ユッコ)だから!」」

 さあ、フェンのかわいい子供こどもにつける名前なまえ。何にしようかなぁ。

 わたしは、行ったり来たりするこれからの生活せいかつを思って、心がウキウキしながら、フェンの家にかった。

 おわり


これでユッコの大冒険は終わりです。
最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。

夜野うさぎ

30.帰るべき場所

 「ただいま~。おかえり~」

 一人でそんなことを言いながら、コハルが王都おうとにあるホームに入っていく。

 結局けっきょくわたしのことはよくわからないってことで、魔王まおうはキョウコがたおしたことになった。

 そのため、キョウコはロンド大陸たいりくのあちこちのくにで、おいわいのパレードをすることになり、大変たいへんそうだった。

 そのパレードにはエドワードたちも参加さんかすることになっているので、ヒロユキとコハルは先に王都おうともどることにしたのだ。

 ちなみに魔大陸またいりくダッコルトで、キョウコたちと、アスタロトをあらたなおうとする魔族まぞくたちと協定きょうていむすばれ、これ以上いじょうたたかいはしないことになっている。

 まあ、のこされた魔族まぞくももともとはダッコルトの住民じゅうみんなわけで、これからは貿易ぼうえき文化ぶんか交流こうりゅうはじまるだろう。

 ロンド大陸たいりく上層部じょうそうぶいやがるかもしれないけど、たがいのことをよくえば、きっと平和へいわ関係かんけいきずいていくことができるでしょうね。

――――

 今日きょうは、なつかしの錬金術師れんきんじゅつしマリーのいえかえってきた報告ほうこくをしてきたところ。

 おばあさんはいてうれしがって、ヒロユキとコハルをきしめ、なかなかはなしてくれなかった。

 とまあ、ひさしぶりのホームにもどってきて、最初さいしょにすることは大掃除おおそうじ

 ゴホゴホとほこりせきをしながら、二人で手分てわけして掃除そうじをする。

 わたしほこりいやなので、屋根やねの上でのんびりひなたぼっこをしている。

 あたたかかい光をびながら、そろそろこうの世界せかいにももどりたいなぁとかんがえている。

 さいわいにして異世界いせかい召喚しょうかん魔方陣まほうじん解読かいどくもすでにませているし、おそらく自分じぶん一人でこうの世界せかいもどることはできると思う。

 でも、いきなりいなくなったらおどろくでしょうしねぇ。

 ちなみにキョウコはいたら、地球ちきゅうとかいう世界せかいもどるかどうかかんがえるとっていた。

 あの子の場合ばあい、おしろ魔方陣まほうじん地球ちきゅう固定こていされているから、もどることはできるらしい。はできないけれどね。

 家の中からこえる掃除そうじおときながら、わたしはそっと目をじた。ふわぁぁぁ。おやすみなさい。

――――

 「おい! ユッコ! かえってきたんなら、かえってきたっていえよな!」

 ふふふ。銀狼ぎんろうのフェンがおこっている。

 ごめんごめん。いっつもふらっと出歩であるいているから、うのをわすれていたわ。

 「ったくよ。心配しんぱいかけさせんじゃねえっての」

 あら? わたし心配しんぱいなんて必要ひつようないのにね。

 「それは、そうだけどよ。……でも心配しんぱいなのは心配しんぱいなんだって」

 そう。ごめんね。今度こんどはちゃんとってから出かけるし、もどってきたらお土産みやげって行くわね。

 「お、おう。わかりゃあいいんだ。わかりゃあよ」

 そうだ! そういえば、アンタのところ、そろそろ子供こどもまれるんだったよね。

 「……もうまれたぜ? 三日前みっかまえだ」

 やったじゃん! 三日前みっかまえか。……よし、今から見に行こう!

 「お、おい。ちょっとてよ」

 や~だよ! たないよ! 名前なまえは?

 「名前なまえか? そ、そのよ。ユッコにつけてもらおうっておもってさ」

 えっ。わたしがつけていいの?

 「お。おうよ。よめともはなしついてんだ。これも親孝行おやこうこうってやつだ」

 ぷっ。くすくす。親孝行おやこうこう? にしなくてもいいのに。

 「うっさい。わらうなよな。こっちは真剣しんけんだっつうのによ」

 ああ、ごめんごめん。

 ――――

 ―――

 ――

「ユッコ! 掃除そうじわったよ!」

 軒下のきしたからコハルがこえで、わたしは目をました。

 へんゆめを見たせいか、みょうさびしい。

 ……そうね。今度こんど、やっぱりもどろう。

――――

 それから一ヶ月いっかげつった。

 ワイバーンの襲撃しゅうげきけた王都おうと復興ふっこうも、順調じゅんちょうすすんでいて、人々のらしももともどりつつある。

 今日きょう、ようやくエドワードたちがかえってきた。

 さっそく帰還きかんのおいわいのパーティーをすることにしたら、なぜか勇者ゆうしゃパーティーの人たちもやってきた。

 王都おうとでの祝勝しゅくしょうパレードは明後日あさって予定よていらしいが、こんなところにいていのかしら?

 みんなでたのしくいし、さわいでいる。

 わたしはころ合いを見て、そっと裏口うらぐちからそとに出て、ほしかがや夜空よぞら見上みあげた。

 すると、キョウコが裏口うらぐちから出てきて、わたしのとなりにすわった。

 「ねえ。ありがとうね。おかげ無事ぶじ魔王まおう退治たいじすることができたわ」

 そういってキョウコがわたし背中せなかでる。

 しばらく沈黙ちんもくがつづき、キョウコがけっしたように、

 「……わたしね。あと一週間位いっしゅうかんくらいしたら、地球ちきゅうもどることにしたわ」

告白こくはくした。

 「こうにはおとうさんもおかあさんもいるし、友達ともだちも。学校がっこうもあるしね」

 うんうん。気持きもちはわかるわ。わたしだってたようなものだもん。

 キョウコは体育座たいいくすわりになった。

 「こっちにもお友達ともだちはできたんだよ。それがさびしいけど。やっぱりこっちはわたし世界せかいじゃないから……」

 キョウコはわたし見下みおろし、

 「だから、ほかひとがいないところでおれいが言いたかったんだ。ありがとうね」

 ふふふ。この子もい子よね。

 わたしはそっと、おまもりがわりに尻尾しっぽの毛をいて、キョウコのかみまぎませた。

 あのが、きっと地球ちきゅうもどっても、キョウコを守ってくれるわ。そうねがいをこめて。

 それに、いつか地球ちきゅうへもあそびに行ってもいいわね。

 わたしとキョウコはそのまましばらくりそって、星空ほしぞら見上みあげていた。

――――

 そらにはけるような青空あおぞらが広がっている。

 けるかぜ気持きもちいい。

 おかの上の大きな木の下に敷物しきものをひいて、コハルが、はなれたところで訓練くんれんしているエドワードとヒロユキの姿すがたをのんびりとながめている。

 ……じつはここ。コハルのゆめのなか。

 わたしはのんびりすわっているコハルの正面しょうめんすわる。

 「ユッコ? どうしたの?」

 コハルのひざの上に前足まえあしせて、

 「あのね。コハル。わたしね。こっちの世界せかいきだけど。もといた世界せかいきなの。……だから、――――してもいい?」

 コハルは突然とつぜんしゃべりだしたわたしを見てびっくりするけど、

 「――――しても、か。……ふふふ。ユッコったら何でもありだよね。うん。わかった。いない間はさびしいけど我慢がまんする」

といって、わたしの体をち上げてぎゅっときしめた。

 「ありがとう。コハル」

 「ううん。いいのよ。もとはわたし召喚しょうかんしちゃったんだし。……それにユッコがいたおかげ平和へいわになったものね」

 そういうコハルのくびもと鼻先はなさきめると、コハルはスリスリとわたしにほおずりをしてきた。

 「ユッコってお日様ひさまにおいがするよね。ふふふ。大好だいすきよ」

 「わたしもよ。コハル。大好だいすき」

29.怒りの鉄槌

――――

 閃光せんこうがおさまったとき、ヒロユキとコハルはそのくずちた。

 それを見た魔王まおう心底しんそこおどろきの表情ひょうじょうを見せる。

 「ば、バカな。ちりのこらぬはず……」

 たりまえよ。今の二人はわたしまもったんだから。

 ……それより魔王まおう。あんた。

 わたしのコハルに、な に し て く れ て ん の よ !

 いかりがこみ上げ、かくしていた尻尾しっぽがすべてあらわれる。

 全身ぜんしんからあふれる力が黄金色おうごんいろのオーラになって立ち上る。

 こんなにおこったのは、じつに1000ねんぶりね!

 たたかいやすいように、ミニサイズの和服わふく人間にんげん少女しょうじょ姿すがた変化へんげする。

 ……ぶっとばしてやる!

 魔王まおうかおまえ瞬間しゅんかん移動いどうし、そのでかい間抜まぬづら尻尾しっぽたたきつける。

 「ぐわあぁ!」

 つづいて、かおさえてうずくまる魔王まおうはら転移てんいし、右手にこれでもかっていうほど力をめ、魔王まおうはらを下から上になぐげた。

 「ふざけんな、この野郎やろう!」

 わたしの力が魔王まおうのなかで爆発ばくはつし、天地てんちひびかせながら巨大きょだい七色なないろの光のはしらとなった。魔王まおうは光につつまれて、

 「そ、そんなぶわぁかなぁぁぁ……」

というこえのこして消滅しょうめつしていく。

 わたし地面じめんにすたっとり立ち、うでんできっとそら見上みあげた。

 ふんっ! おもったか!

――――

 うん? なんだかみょうしずかね。

 そう思ってかえると、みんながポカンとしてわたしを見ている。

 ……ああ! そういえば変化へんげしたまんまだっけ。

 あわててもとのキツネの姿すがたもどる。尻尾しっぽもちゃんとかくして一本にする。

 てへへ。いやぁ。いっつも力をおさえていたからさ。ちょっとでも実力じつりょくを出すのは気持きもちがいね!

 上機嫌じょうきげんでコハルのところへ行くが、コハルもべたにすわんでわたし呆然ぼうぜんとみている。

 ちょ、な、なによ?

 わたしはコハルのひざの上に前足まえあしをのせて、かおをぺろぺろとなめた。

 「きゃっ。ちょ、ちょっと……、ユッコったら」

 そのこえに、うごきが止まっていたみんながわれかえる。

 キョウコが、

 「い、今のは……。魔王まおうは?」

とつぶやいた。

 あはは。ちょっと力入ちからいれすぎて、魔王まおうってば消滅しょうめつしちゃったのよね。ごめんね。お仕事しごとうばっちゃって。

 キツネのまま、素知そしらぬふうにしていると、突然とつぜん、コハルがわたし尻尾しっぽにぎった。

 っひゃあ! ちょっと何してるの?

 コハルがくびをかしげながら、

 「おかしいなぁ。さっきのはゆめかなぁ? 一本だよね」

とぶつぶつっている。

 フローレンスが大股おおまたあるいてきて、わたし見下みおろし、

 「神眼鑑定しんがんかんてい

最上級さいじょうきゅう鑑定かんてい魔法まほうわたしを見る。

 そして、おどろいたように、

 「きゅ、九尾きゅうびきつね? 最強さいきょう神獣しんじゅう?」

とつぶやいた。

 あらぁ……。バレちゃった?

――――

 それから大変たいへんだったわよ。

 みんなしてわたしをなで回すし、「おい。どういうことだ」とかめてくるしさ。

 ……ま、しゃべれないりしたけど。

 コハルもリリーから、最初さいしょ召喚しょうかん魔法まほうのことを、根掘ねほ葉掘はほかれているし。

 ようやく解放かいほうされたのは、もうあさになるころだった。

 とまあこんなわけで、この世界せかい魔王まおうは、あたまのぼったわたしが、うっかりたおしてしまいました。

 ちゃんちゃん。

28.勇者 対 魔王

 「ま、魔王まおう?」

 アスタロトのこえいて、キョウコたちがおどろきのこえを上げた。

 り立った魔王まおうは、身長しんちょう3メートルくらいの筋肉隆々きんにくりゅうりゅう威丈夫いじょうぶで、大きな四枚のつばさみじかい二本のつのをして、赤い目でキョウコたちを見据みすえている。

 地のそこからひびいてくるようなこえで、

 「アスタロトよ。下がれ」

と命じると、きずついていたアスタロトが、

 「はっ! 失礼しつれいいたします!」

って、すぐにどこかへ転移てんいしていった。

 魔王まおうんでいたうでをとき、何も虚空こくう両手りょうてむと、引きいたうでには漆黒しっこくのまがまがしい籠手ガントレットがつけられていた。

 ……どうやらこっちの魔王まおう武闘派ぶとうはのようだね。

 キョウコが勇気ゆうきしぼって、

 「人々の平和へいわをおびやかす魔王まおうよ! わたしゆるさないわ! ここで貴方あなたたおす」

 聖剣せいけんがキョウコのおもいにこたえるようにつよく光った。

 しかし、魔王まおうわらいながら、

 「ぐはははは。こんな小娘こむすめ勇者ゆうしゃだと? はなしにならんわ!」

といって、無造作むぞうさに右手をった。

 その右手から衝撃波しょうげきははなたれ、キョウコたちにおそいかかる。

 聖女せいじょいそいで障壁しょうへきったが、ビリビリとはだ衝撃波しょうげきはつたわった。

 う~ん。わるいけど聖剣せいけんをもっていても魔王まおうの方が強そうね。

――――

 「魔王まおうよ! あいつらの希望きぼう粉砕ふんさいしてくれ!」

 そこへフローレンスとたたかっていたはずのバアルが、たたかいを中断ちゅうだんしてそらんできた。

 それをいかけるようにフローレンスが走ってきている。

 魔王まおうはちらりとバアルを見て、右手で自分じぶんのアゴをでた。

 「そういえばおまえ恋人こいびとはミニーとかいったか。

 ……まったくまだ真相しんそうに気がつかないとは、我が四天王してんのうとはいえ間抜まぬけなやつだな」

とつぶやいた。

 バアルは、それをきとがめ、

 「な、なんのことだ?」

 魔王まおうはニヤリとわらった。

 「おまえおれ封印ふういんいてくれたからな。

 褒美ほうびとしておしえてやろう。ミニーの真相しんそうをな」

 それをいて、バアルもフローレンスもうごきを止める。

 魔王まおう両手りょうてを広げてかたり出した。

 「あのまちおそった魔法まほう使つかいは、おれ洗脳せんのうし力をあたえてやったあわれなおとこさ。

 ……少しでもはや封印ふういんくために、おおくの人をころし、そして、おまえ復讐ふくしゅうり立てるためにな」

 そうって、愉快ゆかいそうにガハハハハとわらはじめる魔王まおうに、バアルが絶望ぜつぼう表情ひょうじょうでわなわなとふるえている。

 「な、なんだって……」

 「がはははは。いやあ。おまえやくに立ってくれたよ。いいこまだった」

 バアルはきっと魔王まおうをにらむ。

 「き、きさま! ぐああぁぁぁぁぁ!」

 突然とつぜん、バアルがむねをかきむしった。

 それを見た魔王まおうが、

 「残念ざんねんだったな。おまえおれ反逆はんぎゃく意志いしを見せたとき、おまえぬようにのろいをかけてある。

 その絶望ぜつぼうとおまえの力は、おれのものになるのさ。がはははは」

 フローレンスがあわててバアルにちかよる。

 「ひ、ひどい。なんてこと……」

 バアルはひざをつきながら、フローレンスの手を取った。

 「すまぬ。フローレンス。おれおろかだった。くそったれが! ……み、ミニー」

 バアルのこえがどんどん小さくなっていく。フローレンスは必死ひっしいのった。

 「ああ! 我らを守護しゅごせし月の女神めがみよ。このもの苦悩くのうのろいを浄化じょうかしたまえ!」

 すると、天上てんじょうから一条いちじょうの光がんでバアルとフローレンスをらす。

 絶望ぜつぼうにゆがんだバアルのかおおだやかになっていく。

 「ふ、フローレンス。ありが、と、う」

 そして、力尽ちからつきたようにバアルがくずちた。その体から、キラキラと光の欠片かけらかび上がり、光のなかを空にかってんでいく。

 フローレンスはそれを見ながら、

 「ああ。バアル。さようなら」

なみだながしながらつぶやいた。

 やがて天上てんじょうからの光がすうっとえていき、フローレンスが魔王まおうをにらむ。

 「魔王まおう絶対ぜったいにあなたはゆるさない!」

 ずっと見ていた魔王まおうが、いきなり拍手はくしゅはじめた。

 「うむ。よい見世物みせものだったぞ。がははは」

 そして、右手の人差ひとさゆびで、だれにしようかえらびながら、

 「聖女せいじょからいくか……。ね!」

 指先ゆびさきから漆黒しっこく即死そくし魔法まほうが、一直線いっちょくせん聖女せいじょにむかってんでいく。

 「きゃああぁぁぁ」

 聖女せいじょんでいき、くずちた。

 魔王まおう意外いがいそうなかおをして、

 「ふむ……。聖印せいいんまもられたか?」

 あっという間の出来事できごとにキョウコのパーティーは呆然ぼうぜんとしていた。

 魔王まおう右手みぎてこぶしにぎりしめ、地面じめんなぐりつけた。

 「ビッグバン・バースト」

 すると魔王まおうのいたところを中心ちゅうしんに、半径はんけい50メートルの範囲はんい地面じめん一斉いっせい爆発ばくはつする。

 「きゃあぁぁぁ!」

 「「ぐわあぁぁぁ」」

 みんながあっというばされ、ちりぢりになって、地面じめんちすえられた。

 キョウコが身体しんたい強化きょうかしてびだす。

 聖剣せいけんつよく光り、キョウコは大きくジャンプして魔王まおうかおけんりかざす。

 ガキィン。

 しかし、魔王まおう人差ひとさゆび聖剣せいけん一撃いちげきめた。

 「なっ」

 おどろくキョウコだったが、次の瞬間しゅんかん魔王まおうがまるでってくるむしはらうように、手のこうでキョウコをはらいのけた。

 「あああぁぁぁぁ」

 さけこえを上げながら、ものすごいいきおいでキョウコがばされ、そのまま地面じめんを10メートルぐらいえぐって、ようやくまった。

 「きょ、キョウコ!」

 魔王まおう圧倒的あっとうてきな力にあおざめながら、アルスがキョウコにちかよる。

 そのあいだなが呪文じゅもんとなえて、魔法まほう構築こうちくしていたマーロンが、両手りょうてまえした。

 「極大きょくだい神聖しんせい魔法まほう、ホーリー・バスター!」

 その両手りょうてを中心に空中くうちゅうに光の魔方陣まほうじんがあらわれ、そこから太い銀色ぎんいろの光がレーザーのように魔王まおうんでいった。

 神聖しんせい魔法まほうの光が魔王まおうむねたる。

 キョウコの方を見ていた魔王まおうが、

 「うん?」

の気のないことを言いながら、自分じぶんむね見下みおろして、ふっといききかけると、ホーリー・バスターの魔法まほうがあっという間に四散しさんした。

 マーロンががくぜんと、

 「ば、ばかな……」

とつぶやき、ひざをつく。

 魔王まおうがキョウコたちを見下みおろし、

 「力のちがいがわかったか? ならば最後さいごくるしまぬよう一撃いちげき圧殺あっさつしてやろう」

 そううと、こしひくくして右手のこぶしかためた。

 こぶし膨大ぼうだいりょう魔力まりょく瘴気しょうきめられていく。

 それを見たキョウコたちはうごくこともできず、絶望ぜつぼう表情ひょうじょうで見ている。

 「……さらばだ! 勇者ゆうしゃよ!」

 魔王まおう正拳突せいけんづきをはなつと、そのこぶしから漆黒しっこく瘴気しょうきだんんでいく。

 「うおおぉ!」「だめ!」

 ちょ、ちょっと! なにやってるの!

 なぜかその瘴気しょうきだん正面しょうめんにヒロユキとコハルが飛びんだ。

 瘴気しょうきだんが二人にぶつかるとき、黄金色おうごんいろ閃光せんこうつよく光った。

27.聖剣の力

 カロンが、

 「はははは。剣を失って終わりかと思ったが、まだまだ楽しめそうだな」

とうれしそうに魔剣まけんかまえた。

 「行くぞ。をすすれ! ダーインスレイブ!」

 コマンドワードを唱えると、魔剣まけんが赤く脈動みゃくどうして形状けいじょうがおどろおどろしく変化へんかする。

 たいするキョウコは自然体しぜんたいで、

 「行くわよ。フラガラッハ!」

聖剣せいけんかまえた。

 二人が同時どうじに走り出し、中央ちゅうおう激突げきとつする。カロンの袈裟斬けさぎりの一撃いちげきを、キョウコはげできりかえす。

 ダーインスレイブとフラガラッハがち合った瞬間しゅんかん、光の爆発ばくはつしょうじた。

 「グワアアァァァァァ」

うらみのこえを上げながら、れたダーインスレイブの刀身とうしんがくるくると回転かいてんしながらんでいった。

 カロンが呆然ぼうぜんと手にのこった魔剣まけん一部いちぶを見る。

 「ば、バカな……」

 次の瞬間しゅんかん、カロンの体にななめのせんはしり、そこからした。

 カロンはそのままくずちる。

 キョウコもおどろきの表情ひょうじょう聖剣せいけんを見つめた。「こ、これが聖剣せいけんフラガラッハ……」

 カロンがたおされたのを見たアスタロトとテリトリは、すぐに戦闘態勢せんとうたいせいに入った。

 アスタロトのムチがキョウコにおそいかかる。

 しかし、その見えないほどはや一撃いちげきをフラガラッハが自動的じどうてきうごいてふせぐ。

 テリトリの瘴気しょうきだんもフラガラッハが容易たやすてた。

 聖剣せいけんがキョウコに、

 「勇者ゆうしゃよ。われ魔力まりょくを」

 「わかったわ!」

 キョウコが魔力まりょく聖剣せいけんに注ぐと、聖剣せいけんびる光がつよくなっていく。

 その光が臨界点りんかいてんえたとき、フラガラッハから神聖しんせい光弾こうだんはなたれ、アスタロトとテリトリにおそいかかった。

 アスタロトはひょいっと空にんでけたが、テリトリは瘴気しょうきかべでふせごうとする。

 しかし、聖剣せいけん光弾こうだんはその瘴気しょうきかべ容易たやすくけちらし、テリトリをつつんだ。

 「お、おのれぇぇ」

怨嗟えんさこえを上げながら、テリトリが消滅しょうめつしていく。

 それを見たアスタロトのひたいからあせながれた。

 「ちょ、なによ? あれは」

――――

 一方、勇者ゆうしゃがわ聖剣せいけんの力に希望きぼうもどしていた。

 みんな立ち上がって体制たいせいととのえ、キョウコのうしろで隊列たいれつむ。

 アルス、リリア、マーロン。そして、エドワードたちがアスタロトを見上みあげている。

 その時、漆黒しっこく夜空よぞらを何かがクルクルと回転かいてんしながらアスタロトの背中せなかからおそいかかった。

 「な、きゃあぁぁぁぁ」

 地面じめんちてきたアスタロトのつばさには、ゴンドーの大きなおのさささっていて、もはやべそうにない。

 アスタロトのかおいたみといかりでみにくくゆがむ。

 「わたしつばさをよくもきずつけてくれたなぁ!」

――――

 わたしはヒロユキとコハルとともに、たたかいの場所ばしょへとはしっていた。

 もう少しで到着とうちゃくというときに、突然とつぜん聖剣せいけんがひとりでにんでいく。ヒロユキとコハルは一瞬いっしゅんおどろいたものの、とにかくはしりつづけた。

 戦場せんじょうでは、キョウコたちが四天王してんのうめられているようだった。そして、そこにはなつかしいエドワードたちの姿すがたもある。

 ヒロユキとコハルは、うれしそうにいそいでエドワードたちのところへ走りっていく。

 わたし戦況せんきょうをみながらついていく。

 ……おお、すごいじゃん! 聖剣せいけん一撃いちげき魔剣まけん破壊はかいし、四天王してんのうも切り捨てたわ!

 コハルが回復かいふく魔法まほうでエドワードたちのきずをいやすと、リリーがぎゅっと華奢きゃしゃなコハルをきしめた。

 エドワードも立ち上がり、ヒロユキのあたまをぐりぐりとでる。

 「よくぞ。無事ぶじだったな。二人とも……。むかえに来たぞ」

 それをいて、強がっていたヒロユキが、かおをくしゃくしゃにして、うんっとうなづいた。

 フランクがそのかたをぽんっとたたいて、

 「今はそれどころじゃない。わってから、色々いろいろかせてもらうよ」

って、たてかまえた。

 まあ、今、四天王してんのうはそれどころじゃなさそうだけどね。

 ……うん? なにかものすごくつよいものが、ここにちかづいているわね。

 きた方角ほうがくから、すさまじいスピードで何かが接近せっきんしている。なんだろう?

――――

 キョウコがアスタロトにりかかろうとしたとき、二人の間に何かがちてきた。

 ドバアアァァン

すさまじい地響じひびきを立てて、何かがり立つ。

 その姿すがたを見たアスタロトが、

 「ま、魔王まおうさま!」

とうれしそうに名前なまえんだ。

 ……へぇ。あれが魔王まおう

26.戦場の再会

 ひときわ大きな爆発ばくはつきて、エドワードたちがばされる。

 かろうじて立っているのは、勇者ゆうしゃのキョウコに騎士団長きしだんちょうアルス、そして聖女せいじょリリアと賢者けんじゃマーロンの勇者ゆうしゃパーティーの四人だけだ。

 エドワードが大剣たいけんつえがわりにして立ち上がろうとする。キッとちゅうをにらむと、「くそったれが」とつぶやいた。

 その視線しせんの先にはちゅうかぶ四つの人影ひとかげがある。魔王まおう四天王してんのう黒騎士くろきしカロン、ダークエルフの魔道士まどうしバアル、サキュバスのアスタロト、死霊王しれいおうテストリだ。

 さっきの大爆発だいばくはつはバアルのはなったものだった。

 四天王してんのうはすうっと地面じめんにおりて、勇者ゆうしゃたちと対峙たいじする。

 カロンが赤い目を光らせて、魔剣まけんダーインスレイブのさきをキョウコにけた。

 「勇者ゆうしゃよ。さきたたかいのりをここでかえすぞ」

うと、一気いっきにキョウコのところへはしんできた。

 そこへキョウコをまもろうとアルスが立ちふさがるが、そこへアスタロトのムチがおそいかかり、よこにはじきばされた。

 すぐに体勢たいせいととのえたアルスのまえに、アスタロトがいろっぽいみをかべる。

 「ふふふ。アナタの相手あいてわたしよ。だれにも邪魔じゃまはさせないわ」

 アルスは冷静れいせいに剣をかまえた。

 「悪魔あくまめ。この宝剣ほうけんディフェンダーで成敗せいばいしてくれよう」

 アスタロトはたのしそうにわらいながらムチを手でしごいた。

 一方、バアルは賢者けんじゃマーロンと魔法まほういをしている。

 次々つぎつぎはなつバアルの魔法まほうと、寸分すんぶんたがわぬ威力いりょく魔法まほうはなって相殺そうさつするマーロンに、バアルは、

 「ほお。人間にんげんのくせになかなかやるな」

感心かんしんしていた。

 そのこうではテストリと聖女せいじょリリアが対峙たいじしている。

 「ぐふふふ。うつくしいおじょうさん。して配下はいかにしてさしあげましょう」

 そういいつつ骸骨がいこつのついた不気味ぶきみつえの先が光ると、テストリのまわりの地面じめんから二十体のスケルトンナイトがあらわれた。

 それを見た聖女せいじょリリアは、むねのペンダントについている聖印せいいんにぎり、

 「いのちをもてあそぶ邪悪じゃあく悪魔あくまよ。かみまえでは無力むりょくりなさい」

というと、その聖印せいいんから光がはなたれ、スケルトンナイトを次々つぎつぎちりにしていく。

 それをみたテストリはたのしそうにわらい、

 「では、次々に行きますよ。どこまでえられますかな?」

った。

 そのまわりにはすであたまよろい死霊しりょうデュラハンが5体、ひかえていた。先ほどのスケルトンナイトのでないほどつよ瘴気しょうきはなっている。

 それを見た聖女せいじょ表情ひょうじょうがこわばるが、聖印せいいんつよにぎる。

 「何が来ようとけません!」

 こうして四者四様よんしゃよんようたたかいがはじまった。

――――

 キョウコが必死ひっしにダーインスレイブの斬撃ざんげきながしている。

 「くぅ! 前より……つよい!」

 カロンはどうもうみをかべ、一端いったん距離きょりる。

 「たりまえだ。ここは魔大陸またいりくダッコルト。我ら魔族まぞくの力が思う存分ぞんぶん発揮はっきできる瘴気しょうきがうずまいているってわけだ。……簡単かんたんわってくれるなよ?」

 ダーインスレイブに血管けっかんのような光が脈動みゃくどうする。

 瘴気しょうき魔力まりょくがカロンにあつまっていく。キョウコは光魔法ひかりまほうを剣に付与ふよしてかまえた。

 「くらえ!」

 カロンが目にもまらぬはやさで、キョウコにおそいかかった。

 上段じょうだんからのとしに、キョウコはながそうと剣をり上げた。

 その瞬間しゅんかん

 パキィィィン

んだおとを立てて、キョウコの剣がぷたつにとされた。

 一瞬いっしゅん、ほうけた表情ひょうじょうになったキョウコのおなかに、カロンのりがたたまれて、キョウコがんでいく。

 大木に背中せなかを打ち付けたキョウコは、力なく崩れ落ちた。その口から血がどばっと吹き出る。

 そこへ、アルス、リリア、マーロンが、同じようにばされてきた。

 キョウコはを手のこうでぬぐって正面しょうめんを見る。そこにはまだまだ余裕よゆうのある四天王してんのうが並んで立っていた。

 バアルが、

 「勇者ゆうしゃもこれまでだな」

って、手にしたつえ魔力まりょく集中しゅうちゅうさせると、その杖の先にくろ火球かきゅうまれ、どんどん大きくなっていく。

 それを見たリリアがあおざめて、

 「もう魔力まりょくが……」

とつぶやいた。

 アルスがよろよろと立ち上がりながら、キョウコたちの前に立ちふさがった。

 「われらの希望きぼうころさせはしない」

 それをいたバアルがむしけらを見るような目で、

 「愚劣ぐれつ人間にんげんめ。希望きぼうなどないのだ。……もう500年もむかしからな」

といい、直径ちょっけい10メートルになった黒火球こくかきゅうはなった。

 アルスがこしとしてり、両手りょうてを広げて雄叫おたけびを上げる。

 「うおおおーー!」

 火球かきゅう容赦ようしゃなくアルスをもうとせまったとき、その目前もくぜんで光の障壁しょうへきあらわれて火球かきゅうふせいだ。

 バアルがきっと森の中をにらんだ。

 「おまえか! フローレンス!」

 林の中からダークエルフの神官しんかんフローレンスがあらわれた。

 「バアル。こんなことは、ミニーもかなしむわ。もうやめて!」

 バアルの全身ぜんしんから瘴気しょうきが立ち上る。その目は赤く光っている。

 「ふざけるな! やつらが! 人間にんげんどもが! 守ってやったのに、ミニーに何をした! ゆるせるものか!」

 それをおもしろそうに見つめるバアル以外いがい四天王してんのうたち。アスタロトがくちびるをなめて、「ふうん」とつぶやいている。

 フローレンスはキョウコたちにちかより、魔法まほう怪我けが回復かいふくさせた。

 「バアル。わたしがあなたを止める。ミニーの親友しんゆうとして、……そして、あなたの親友しんゆうとして」

 そういったフローレンスはバアルと対照的たいしょうてきに白いかがやきにつつまれた。

 バアルとフローレンスが同時どうじに走り出す。

 バアルが漆黒しっこく魔法まほうやりはなつと、フローレンスは白銀はくぎん魔法まほうやりむかつ。二人だけのたたかいがはじまった。

 アスタロトは二人のたたかいをちらりと見て、

 「あっちもおもしろそうだけど、アナタたちをさっさとかたづけてからのゆっくりたのしませてもらうことにするわ」

う。

 そこへ林の中から一本のけんんできて、キョウコのまえに刺さった。

 四天王してんのうやキョウコたちがんできた方の林を見る。

 エドワードたちが、

 「「「ヒロユキ! コハル!」」」

おどろいたこえを上げた。

 さやに入った剣がキョウコにかたりかける。

 「勇者ゆうしゃよ。われけ。われ聖剣せいけんフラガラッハなり」

 キョウコは立ち上がり、そっとつかにぎる。

 「フラガラッハ。わたしに力をして!」

 すらっときはなった刀身とうしん青白あおじろく光りかがやいていた。

25.炎上する村

 転移てんいした先は、わたしたちがトラップに引っかかった神官しんかんさんのいえ裏手うらてだった。

 ちょうどよるだったようだが……。むらが火にえていて、赤いほのおいろ黒々くろぐろとしたけむりいろまっている。

 「な! これは」

 「きゃあ!」

 二人がおどろきのこえをあげた。

 聖剣せいけんがするどく、

 「気をつけよ! 魔族まぞく襲撃しゅうげきぞ!」

注意ちゅういをうながした。

 モクモクと黒煙こくえんが立ちこめ、家々いえいえが火にかれている。むらのあちこちで、ダークエルフたちとくろつばさ尻尾しっぽを持つ魔族まぞく魔物まものたたかっている。

 うん? 気配けはい感知かんちを広げると、むらの中に予想外よそうがいの人たちの気配けはいをひろうことができた。

 これはキョウコやエドワードたちね。

 「あなたたち! 無事ぶじだったの?」

 うしろを見ると、そこには結界けっかいっているファミーユがいた。結界けっかいの中には、まだ小さいダークエルフの子供こどもたちがいる。

 「はやくこっちへ!」

とファミーユがさけんだその時、くろけむりの中から何かにはじかれるようにゴンドーがんできた。

 「ぐおっ」

 ゴンドーは地面じめんころがりながら、ちょうどヒロユキたちのまえまり、すぐに立ち上がって大斧おおおのかまえる。

 その視線しせんの先からは、一人の筋肉質きんにくしつ魔族まぞくあらわれた。魔族まぞくは、ゴンドーのうしろにいるわたしたちやファミーユたちを見てニヤリとわらった。

 「ほう。こんなところに丁度ちょうどいいにえがたくさんいるじゃないか」

 そのこえに、ゴンドーは、いま、気がついたようにうしろを見る。

 「な! ヒロユキ! コハル!」

 そのすきいて魔族まぞくんできた。あぶない!

 わたしび出そうとした瞬間しゅんかん、ヒロユキの手の聖剣せいけんさやに入ったままんでいき、魔族まぞくをはじき返した。

 「ぐううぅぅ」

 聖剣せいけんふたたびヒロユキの手にもどる。

 それを見たコハルが思わず、

 「すごい……」

とつぶやく。ゴンドーも目をまるくして聖剣せいけんを見たが、すぐに気を取り直して魔族まぞくの方にきなおった。

 魔族まぞく忌々いまいましげに剣を見て、

 「なんだその剣は?」

警戒けいかいしながらいった。

 結界けっかいの中でファミーユが、「ま、まさか」とつぶやいているのがこえた。

 ……さて、状況じょうきょうがよくわからないけれど、あの魔族まぞく。やっちゃっていいよね?

 いつものごとく、ばれないように。――爆発エクスプロージョン

 突然とつぜん爆音ばくおんとともにゴンドーの正面しょうめんにいた魔族まぞく爆発ばくはつまれた。

 「ぐおおおおー」

 ボロボロになった魔族まぞくがそこにうずくまる。

 それを見たゴンドーがおどろきながら、「ダークエルフの魔法まほうか……」とつぶやいた。

――――

 「ええ! エドワードたちがきてるの?」

 「おねえちゃんも一緒いっしょなの?」

 ゴンドーからはなしいたヒロユキとコハルがおどろきのこえを挙げる。

 ゴンドーが手短てみじかにはなしてくれた内容ないようによると、

 勇者ゆうしゃキョウコと一緒いっしょに、エドワードたちもこの魔大陸またいりくダッコルトにやってきたらしい。

 けれど、このもりちかくで、魔王まおう四天王してんのうせにあってたたかうも敗戦はいせん。森にんだ。

 四天王してんのう追撃ついげきによってダークエルフの村の結界けっかい破壊はかいされ、今、村の中でダークエルフたちと協力きょうりょくしながら四天王してんのうたたかっている最中さいちゅうというわけ。

 感知かんち能力のうりょくで村の中をさぐる。

 ……なるほど。たしかに大きな力を持つ魔族まぞく反応はんのうが四つ。それとたたかっている人たちは一箇所いっかしょにあつまっている。これがキョウコやエドワードたちだろう。

 ゴンドーはいそいでみんなの所ヘはしっていった。

 ファミーユが結界けっかいに入れとっているけど、ヒロユキもコハルもそれをことわった。

 「おれたちも一緒いっしょたたかう!」

 「それにこの剣をおねえちゃんにとどけないとね」

 ファミーユがおこったように、

 「何をってるの! あなたたちまだ子供こどもなのよ!」

うが、二人とも絶対ぜったいがらない。

 聖剣せいけんフラガラッハが、

 「おぬし気持きもち、ありがたけれど、われ勇者ゆうしゃもとへ行かねばならぬ。……そなたらは下の聖剣せいけん避難ひなんするがよい」

うと、

 「ちょ、ちょっとぉぉ――」

というファミーユのこえ無視むしして転移てんいさせてしまった。

――――

 さて、ではわたしたちもゴンドーのあとって、合流ごうりゅうしましょう。

 こっそりと二人に隠密おんみつ魔法まほうをかけ、村の中に入りんだ。

24.聖剣の間

 二人におくれてわたし部屋へやに入ると、うしろでとびら勝手かってまった。

 最後さいご部屋へやは、今までの岩をくりぬいた洞窟どうくつふうではなく、おごそかな神殿しんでんのような白い大理石だいりせき部屋へやだった。

 先に入った二人は部屋へや中央ちゅうおう鎮座ちんざしている一本のけんに目が釘付くぎづけになっている。その剣はさやに入っているけれど、あわい光をはなっている。

 あれが女神めがみっていた聖剣せいけんね。

 見たところ装飾そうしょくがないシンプルなけんのよう。たしかに不思議ふしぎな力の波動はどうかんじる。……前にかんじた波動はどう正体しょうたい聖剣せいけんだったみたい。

 ヒロユキが、

 「なあ、あれってこのダンジョンのおたからだよな?」

とコハルにたしかめる。コハルも聖剣せいけんに心をうばわれたように、

 「うん。そうだよ。たぶん」

った。

 ヒロユキがおそるおそる聖剣せいけんちかづき、そっと手をばす。

 その時、ヒロユキの手が何かにはじかれた。

 どこからともなく、男性だんせい女性じょせいかわからないこえこえてくる。

 「試練しれんえしものよ。われ聖剣せいけんフラガラッハなり」

 へぇ。意思いしのある聖武器せいぶきなわけね。

 わたしはそれをきながら、のんきにかんがえていたが、ヒロユキとコハルがものすごくおどろいている。

 「も、もしかしてけんがしゃべっているのか?」

 そういうヒロユキに、聖剣せいけんフラガラッハは、

 「なり。されどなんじら二人は、われをふるうにいまだ力およばざる。……ねがわくば、われ使つかいこなしうる勇者ゆうしゃのもとへ」

 そうか。この剣は聖剣せいけんはら希望きぼう武器ぶきだものね。たしかに、魔族まぞくたたかうあの勇者ゆうしゃの女の子が使つかうべきでしょうね。

 二人とも同じことを思ったようで、コハルがヒロユキに、

 「ねえ。キョウコおねえちゃんにとどけてあげようよ」

うと、ヒロユキもうなづいて、聖剣せいけんに、

 「間違まちがいなく、キョウコおねえちゃんのところまでれて行くよ」

かたりかけた。

 「ならば、そなたらにも力をあたえよう」

 聖剣せいけんはそういうとまぶしく光った。……うん。聖剣せいけんうように、二人の身体しんたい能力のうりょくが上がったみたい。

 その光がおさまり、ヒロユキがふたたび手をばす。今度こんどはじかれずにささげるように両手りょうてち上げた。

 「……すごいな」

 コハルもヒロユキのとなりに立って、剣を見ている。

 「ねえ。ヒロユキ。いてみて」

 コハルに言われてヒロユキが、「ああ」とうなづいた。

 おそるおそるつかに手をそえて、そっと引き――けなかった。

 「え?」

 いぶかしげなこえをあげるヒロユキに、コハルが、

 「どうしたの?」

 「けないんだ。このけん

 ヒロユキが何とか剣を抜こうと力をめるが、どうやらビクともしないようだ。

 「資格無しかくなものわれけぬ」

 ふたた聖剣せいけんこえがした。

 ……まあ、そうね。まだまだ力不足ちからぶそくだもんね。

 わたしはそうおもいながら、みょうにかしこまる二人を見ていた。

――――

 二人は他にこの部屋へやに何かないか見て回ったが、残念ざんねんながら何も見つけられなかったようだ。

 わたしは、二人がいたころを見計みはかららってちかよると、そのまま二人をみちびくように、おくかべかった。

 そこには、地上ちじょうへの転移てんい魔方陣まほうじんえがかれているから。

 コハルがうしろをついてきながら、

 「あ。それってもしかして……」

とつぶやく。

 「地上ちじょうへの転移てんい魔方陣まほうじんだな」

 ヒロユキがそういうと、二人は次第しだいあしになっていく。

 ふふふ。これでようやくかえれるもんね。

 魔方陣まほうじん手前てまえでコハルが、

 「でもこれって、どうやればいいのかな?」

としゃがんだ。

 すると聖剣せいけんが、

 「魔方陣まほうじんの上にるがいい。われ起動きどうしよう」

った。

 わたし起動きどうしても良かったけど、まあ、ここはまかせようか。

 二人と並んでわたし魔方陣まほうじんの上に立つと、自然しぜん魔方陣まほうじんが光りはじめ、ぶううぅぅんという音がしはじめた。

 コハルが片手でわたしげ、もう片方の手でヒロユキと手をつなぐ。

 ヒロユキがわらった。

 「よし。かえろう!」

 わたしたちは光につつまれて転移てんいした。

23.3つの試練(3)

――――

 それからしばらくして、ヒロユキが立ち上がり、

 「よし! わかった!」

 コハルもつかれた様子ようすかくさずに立ち上がって、

 「そうね」

 どうやらこたえが出たみたいね。

 ヒロユキがドアノッカーのところに行き、コハルをかえる。

 「いいな?」

かえすと、コハルがうなづいた。

 ヒロユキがゆっくりとノッカーでドアをたたく。

 1、2、3……。

 「6と。これでよし!」

 ちょっとったぁ! よしじゃなーい!

 わたしはすぐにびかかって、最後さいご一回いっかいのドアノックを尻尾しっぽ無理むり矢理やりたたいた。

 それを見たヒロユキとコハルがあおざめる。

 「おい!」「ちょ、ちょっと! ユッコ、ダメ!」

 それはこっちのセリフ! なにかぞ間違まちがいしてるのよ!

 部屋へや全体ぜんたい震動しんどうはじめ、二人がっておびえている。

 とびらつよい光をはなち、どこからともなく女性じょせいこえこえてくる。

 「せ、正解せいかいよ」

 女神めがみこえだ。気のせいかわらいをこらえているようにこえる。……見ていたわね。きっと。

 それをいたヒロユキとコハルはほっとむねをなでろし、あわててたがいからはなれた。

 そして、微妙びみょう表情ひょうじょうかお見合みあわせ、

 「もしかしておれたちの方がまちがってた?」

 「……みたいね。ユッコの方があたまがいいってことよね……」

 はあ。もっと勉強べんきょうをしっかりしてよね。あやうくぬところだったじゃないの!

――――

 二人は気持きもちをえるために、少し休憩きゅうけいするようだ。

 さっきの問題もんだい間違まちがえたけど、判断はんだん間違まちがっていないと思う。だって次は……、多分たぶんちから試練しれん、ボスルーム。ヒュドラが相手あいて

 わたし前足まえあしでそっととびらをさわる。

 むこうの部屋へやには、たしかに体長たいちょう15メートルもの巨大きょだいなヒュドラが中央ちゅうおうかまえている。

 っていうか、二人じゃ無理むりね。ちょっとズルをするようでわるいけど、女神めがみさま期待きたいするなら将来しょうらいの二人におねがい。

 わたしは心の中でそうねんじて、とびらしに石化せきか魔法まほうでヒュドラの心臓しんぞういしにした。

 ヒュドラは巨体きょたいだけに、すぐには気がつかなかったようだけど、血流けつりゅうってねむるように目をじて地面じめんそべっていく。

 ……はい。退治終了たいじしゅうりょう耳元みみもと女神めがみが、「もう。しょうがないな」っていうこえこえた気がするけど。多分たぶん、気のせい。

 二人が気合きあいを入れて、そばにやってきた。

 「コハル。行くぞ!」

 「うん」

 そして、ゆっくりととびらひらいてなか瞬間しゅんかん

 「「ヒッ」」

いきをのんでかたまった。そのあし恐怖きょうふふるえている。

 あれ? もう退治たいじしちゃったけど。もしかしててるって思っている?

 ヒロユキが小さなこえでコハルにささやく、

 「どうやらてるみたいだ。絶対ぜったいこすなよ」

 「うん。……ねぇ。ヒロユキ。あっちの出口でぐちとびらいてない?」

 「え? 本当ほんとうだ。開いてる」

 「だからさ。そっとしずかにとおけて、行っちゃおうよ」

 ……あのう。もうんでるんだけど。

 そう二人に言いたいけど、言えない。

 二人はヒュドラがているうちにと、そろりそろりと部屋へや壁伝かべづたいに反対側はんたいがわにある出口でぐちかっていく。

 しょうがないから、わたしもそれについてあるいて行く。なんだか釈然しゃくぜんとしないけどね。

 さいわいにというより、たり前だけど。無事ぶじ出口でぐちにたどりいた二人は、そっと最後さいご部屋へやに入っていく。

 わたしうしろをいて、ヒュドラを見て、もったいないから魔法倉庫マジック・ガレージにヒュドラの死体したい収納しゅうのうした。

 一瞬いっしゅんでヒュドラの巨体きょたいがかきえる。……これでよし。ヒュドラのにくってあぶるとおいしいのよね。二人はいらないみたいだし、わたし食料庫しょくりょうこのストックに入れておこう。

22.3つの試練(2)

 ヒロユキもコハルもどこかへかって歩いている。

 その表情ひょうじょうはどこか決意けついちた表情ひょうじょうだ。

 女神めがみがうなづきながら、

 「どうやら二人とも、自分じぶんこころかげにさんざんにけなされたみたいね」

 その説明せつめいきながら、二人とも本当ほんとう大丈夫だいじょうぶ心配しんぱいになる。

 女神めがみわらいながら、

 「あら? しんじられない? ふふふ」

 そうじゃないけど……。いや。やっぱりそうなのかな? 心配しんぱいよねぇ。

 「さすがは神獣しんじゅう正直しょうじきね。……まあ見ていなさいな」

――――

 ヒロユキが歩いて行く先には一枚いちまいとびらがあり、その前でかげヒロユキがっていた。

 かげヒロユキはニヤリとわらい、

 「もう行くところなんだが、はなしがあるならさっさとしてくれ」

 ヒロユキはいきを一つつき、かおを上げた。その目にはつよ意志いしかんじられる。

 「おまえうとおりだ。……おれ無力むりょくさ」

 かげヒロユキはせせらわらう。

 「ほらな。だから――」

 しかし、ヒロユキは一歩いっぽふみだすと同時どうじに、かげヒロユキのこえをさえぎって、

 「だけど、おまえとは交代こうたいしない」

断言だんげんした。

 「ふうん」

 「今は無力むりょくでも、おれは。おれおれのままでつよくなる。コハルや、みんなをまもれるくらい!」

 かげヒロユキは面白おもしろそうにヒロユキの言葉ことばいている。

 ヒロユキはかげヒロユキに手をさしのべた。かげヒロユキはその手を怪訝けげんそうに見つめる。

 「だからよ……。一緒いっしょに行こうぜ。おまえおれなんだろ?」

 「ふ、ふふふふ。はははは! そうさ。おれはおまえさ。……だからよ。いつもおまえの中で見てるぜ。失望しつぼうさせんなよ」

 かげヒロユキはひとしきりわらうと、そのままヒロユキの体の中にまれるようにえた。

 一人になったヒロユキは、こぶしつよにぎる。

 「わかってるさ。まかせてくれ」

 そうつぶやくと、とびらに手をかけた。

――――

 一方、コハルの方のスクリーンでも、かげコハルがとびらの前でたたずんでいた。

 「あら? 何の御用ごようかしら?」

 コハルは、かげコハルの前まで行き、正面しょうめんから相手あいてかおをじっと見つめている。

 「あなたのうとおりよ。……わたしは一人じゃなんにもできなかった。それに、そんな自分じぶんいやだったわ」

 「ふうん。ようやく自覚じかくしたわけね」

 コハルは決意けついめた目で、かげコハルを見る。

 「でもね。あなたとは交代こうたいしないわ。わたしは一人じゃない。だれかのためにわたしができることをする。……みんなでつよくなる。それがわたしだもの!」

 かげコハルは面白おもしろそうにコハルを見つめた。

 「なるほどねぇ」

 コハルはかげコハルにちかより、両手りょうてひろげてかたりかける。

 「だから、あなたもわたし協力きょうりょくして。……もっとわたしもしっかりするし、一緒いっしょに行こうよ」

 それをいたかげコハルはニヤリとわらった。

 「それがあなたの結論けつろんね。……いこと? 協力きょうりょくすることと依存いぞんすることはちがうのよ? ちゃんとあなたの中で見ているからね。ダメだと思ったら、すぐにあなたをるからね」

 コハルがにっこり微笑ほほえんだ。

 「もちろんよ。だって、あなたもわたしだもの」

 かげコハルは、

 「わかってればいいのよ」

と言いながら、両手りょうてひろげたコハルの中にまれていった。

 コハルがこぶしにぎる。

 「ええ。ちゃんと見ていてちょうだい。あなたがいるかぎり、わたしは一人じゃないんだから」

そうつぶやいたコハルがとびらひらいた。

――――

 月の女神めがみが、ぱちぱちと小さく拍手はくしゅした。

 「お見事みごとね。二人とも勇気ゆうき試練しれんはクリアしたわ」

 わたしもスクリーンで見ていて、思わずそっといきをはいた。よかったわ。とくにコハルなんてどうなるかと……。

 ふと気がつくと女神めがみ面白おもしろそうにわたしを見ている。

 「そろそろ、あなたも行かなきゃいけないでしょ?」

 あっ。そうだわ。……でもどうすればいいのかしら?

 「安心あんしんして。……だってあなた、もう半分はんぶんくらいわたしたち神様かみさまみたいになってるから、ただねんじればいいのよ」

 ねんじれば?

 「そう。……二人のところへってね」

 なるほど。……女神めがみさま。二人はこの試練しれんで一つつよくなったわ。ありがとう。

 女神めがみは手をって、

 「おれいなんていいって。……二人が自分じぶんえたんだから」

 ふふふ。でもありがとう。そろそろわたし、行くわ。

 「ちょっとのあいだだったけど、異世界いせかいからきたひと? とおはなしできてよかったわ。たのしんでいってね」

 ええ! じゃあ、またいずれ。

 わたし女神めがみにそう言うかけると、そっとねんじた。――二人のところヘ!

――――

 女神めがみ転移てんいしていったユッコを見送みおくると、ふたたことに手をそえた。

 「異世界いせかい神獣しんじゅうユッコか。……ふふふ。今度こんど会ったときには、是非ぜひ、あのつややかな毛をモフらせてもらわないとね」

 そして、ことをかきらし、うたうたした。

――――

 すっと転移てんいした先は洞窟どうくつのなかの小部屋へや。どうやらあの大きな門をくぐった先の小部屋へやみたいね。

 ヒロユキとコハルも同時どうじ転移てんいしてきて、慌ててキョロキョロとまわりを見まわしている。

 おや? こうして二人を見ると、まるでレベルが上がったかのように存在感そんざいかんつよくなっているのがわかる。

 やっぱり勇気ゆうき試練しれんえたからだろうね。

 「コハルもユッコも無事ぶじだったか?」

 「ええ。ヒロユキも?」

 ――それから二人はどんな試練しれんがあったかをはなし合っていた。

 この部屋へやてきもいなくて安全あんぜんなようだけど、なにやらつぎとびらのところに水場みずばがある。

 ……どうやら知恵ちえ試練しれんみたいね。

 次の部屋へやとびらに行くと、そのとびらにはこういてあった。

 かわべりに小舟こぶねが一つおいてある。

 そこへ、オオカミとひつじれ、リンゴのはいったふくろった男がやってきた。

 小舟こぶねちいさく、一度いちどに、おとこともう一つの荷物にもつしかはこぶことができない。しかも、オオカミとひつじだけにすれば、ひつじはオオカミにべられてしまう。ひつじとリンゴだけを一緒いっしょにしておけば、リンゴはべられてしまう。

 おとこ無事ぶじ荷物にもつをうしなうことなく、むこうぎしわたるためには、何回なんかいかわ横断おうだんしなければいけないだろうか。

 このさきすすもうとおもうものは、その回数分かいすうぶんだけノックせよ。

 もし間違まちがえたならば、たちまちにこの部屋へやは水にざされるであろう。」

 リドルだ。見ると、問題もんだいぶんよこにドアノッカーがついている。

 ……厄介やっかいね。

 整理せいりしてみましょうか。

 1.一度いちど小舟こぶねれるのは、おとこ荷物にもつ一つ。

 2.オオカミとひつじだけにしてはいけない。

 3.ひつじとリンゴだけにしてはいけない。

 ヒロユキとコハルはリドルをんでうなっている。

 えっと。多分たぶんあたまの中だけでかんがえてると無理むりっぽいわよ?

 そうおもって二人を見ていると、ヒロユキが、

 「わからん……。コハルは?」

 「さっぱりね。どうしよっか」

 ……全然ぜんぜん、ダメってかんじね。仕方しかたない。ちょっと手伝てつだいましょうか。

 わたしは足のツメを出して、地面じめん二本にほんせんを引いた。

 するとヒロユキとコハルがこっちを見る。

 らんぷりして、ゆかにころがっている石を四つくわえて、はしっこにいた。

 それを見たコハルが、「あっ」と何かひらめいたようだ。

 「そっか。せん一番いちばん左側ひだりがわがこっちのきし一番いちばん右側みぎがわこうぎしせんせんあいだかわってことね」

 ヒロユキもわたしが何をしたいのかわかったようで。

 「なるほど。で、この石が、男とオオカミと羊とリンゴってわけか」

 「実際じっさいうごかしてかんがえてみましょ?」

 それから二人はああでもないこうでもないと言いながら、石をうごかしている。

 わたしすわりながら、二人がこたえを出すのをじっとつことにした。

 これも二人の試練しれんだからね。

 ちなみにこたえは7よ。わかるかしら?

 まず男が羊をはこぶ(1)。

 一人でもどってくる(2)。

 次にオオカミをはこぶ(3)。

 羊をれてもどってくる(4)。

 リンゴをはこぶ(5)。

 一人でもどってくる。(6)

 羊をつれれてわたる(7)。

 ね? 簡単かんたんでしょ?