07 生徒の魔法実演1

 「なあ。あの人たちって、どれくらい強いんだろうな?」

 魔法剣士の男子学生ハバルクは、隣の女子生徒チータに話しかけた。

 「確か宮廷魔導師部隊で平均魔力量が15万くらい。熟練の冒険者で10万。ここの先生たちで12万。市井の魔法使いで8万くらいだったわよね。ランクAだから……、宮廷魔導師ほどじゃないにしても12万くらいじゃないかしら。」

 「ふ~ん。まあそれくらいとすると、別に先生らと変わんないな。」

 その二人の会話に、やはり魔法剣士のナダルが割り込んだ。

 「次の授業で実力を見せてもらおうぜ。実力のない奴から教わることなんてないしな。」

 ノルンが空に向けて火球を一つ打ち上げて、学生を集める。

 「そろそろ始めるわよ!集合!」

 それを聞いてナダルが、ハバルクとチータにニヤリと笑みを浮かべた。

 「……俺らの実力も見てもらおうぜ。」

 ぞろぞろと学生たちが集まってきた。

 「さあ、それじゃ、次の授業行くわよ。次は専攻別に分かれて、一人ずつ得意な魔法を見せてもらうわ。魔法剣士は……そうね。ジュンと模擬戦でもしてもらおうかしら。」

 それをきいた魔法剣士専攻の学生は、ジュンの方を見る。ジュンは、急に視線が集まったことにドギマギしながら右手を挙げる。

 「了解だ。ノルン。」

 校庭の先には、一応の攻撃目標として、ノルンが土人形を作成した。

 最初は土魔法を得意とする学生たちだ。人間族の女子が2人、猫人族の女子が1人、人間族の男子が1人の4人が、間隔を開けて一列に並ぶ。

 「じゃあ行くわよ。ピーっ!」

 ノルンの笛が鳴ると、みなが杖を掲げて詠唱を始めた。

 「「我がマナを糧に貫き、穿ち、縫い止めよ。クレイ・ランス!」」

 人族の女子2人は仲良くクレイランスを、ほぼ同時に唱えおわった。すると、一人の女子生徒の足下から土槍が跳び出して、土人形の胸を貫いた。

 もう一人の方は、的になっている土人形の足下から土槍が跳び出して、同じく胸を貫いた。

 「我がマナを糧に、巻き込み、圧し潰せ!土砕流!」

 男子生徒が詠唱を終わると、土人形の周りの地面が渦巻き、土人形を巻き込んでとぐろを巻き、その圧力で土人形を打ち砕いた。

 「我がマナを糧に、我が身を守り、敵を打つ篭手となれ!クレイ・フォーム!」

 猫人族の女子生徒は、詠唱が終わると同時に走り出す。その手に硬化した篭手が生まれ、土人形に右下からブローをくらわせた。

 土人形はあっけなく上半身が破砕される。……なかなか応用が利きそうな魔法で、獣人族にはぴったりでおもしろい。

 「ほお。さすが高等部3年といったところか。なかなかの詠唱速度と威力ですな。」

 チャンドラさんが俺の隣で、今の土魔法を評価した。

 「……しかし、魔力制御にはまだムラがある様子。」

 「はい!じゃあ、次!風魔法の子!」

 学生たちが並んでいる間に、土人形が同じ位置に人数分が形成されていく。

 風魔法の子たちは、人間族の女子生徒が2人、男子生徒が4人、犬人族の男子が1人だ。

 打ち合わせだろうか。人族の男子学生の一人が、犬人族の子に何かささやき、犬人族の子が頷いている。

 「はじめ!ピーっ!」

 学生たちが次々に詠唱をし、終わった子から発動していく。

 ふうん。風刃が3人。小型の竜巻が2人か。

 一呼吸置いて、さらに一人の男子生徒が詠唱を終える。

 「我がマナを糧に、敵を打ち破る鉄槌となれ!サンダー・ストライク!」

 男子生徒の持つ杖から、一条の雷撃がババババッと迸り、土人形を貫き、粉砕した。

 と次の瞬間、犬人族の男子が、足と腕に風をまとわせ、最後の一つの土人形を打ち砕く。

 へぇ。学生で雷撃魔法って珍しいんじゃないか?それにさっきの打ち合わせは、雷撃のためだろう。

 俺は名簿を見る。雷撃魔法を使った子は、ニンバスというらしい。なぜこんな子が8組なのか疑問だが、なかなかおもしろいな。

 その後も、学生たちのテストはつづく。火魔法の子のなかに、風魔法もあわせて火炎旋風を放った子がいたり、水魔法の子のなかにアイス・ランスを放った子がいた。

 神聖魔法の子が二人いたが、この子らは修道院の子のようで、ヘレンを相手に神聖回復魔法をかけ、さらにヘレンからアドバイスをもらっていたようだ。まあ、ヘレンはもともと修道女。神聖魔法の使い手だから、貴重な先輩だ。

 魔導工学を専門とするウルスは、お手製の魔導機械を起動して見せた。

 ウルスが持ってきたのは、いわば水の出てくる水筒だった。

 構造は簡単で、普通の水筒の蓋に水魔法の魔方陣が刻まれており、蓋の上から少しの魔力を流し込めば、あっという間に水筒が満タンになるというもの。

 魔力のない人のために、蓋に魔石を取り付けるアタッチメントがあり、魔石に込められた魔力を使用して水を出す構造だ。

 苦労したのは、水筒にある程度の水が入っている状態で水を発生させると、下手をすると破裂してしまうので、ある一定量を超えたら魔力の供給が遮断されるようにしたところだそうだ。

 ……うん。これは結構すごい発明じゃないか?これがあれば緊急時も旅行時も、魔法が使えない人でも水の確保が容易になる。

 ただ、どうも生活魔法の一つとして水を発生させる魔法を身につけた人も多いらしく。チャンドラさんの評価はそれほどでもなかった。

 う~ん、大発明だと思うけどな。

 そんな俺の感想をよそに、いよいよ最後の魔法剣士のテストとなった。

 ……さて、学生さんの力はどんなもんかね?