09 先生の模擬戦

 俺が学生たちの方へと戻ると、なぜかみんながキラキラした目で俺を見ていた。Why?

 「ジュン。お疲れ様。」

 「ははは。ありがと。ノルン。」

 「どうやら魔法剣士を鍛えるのはジュンの方が良さそうだわ。お願いできる?」

 「ああ、いいよ。楽しそうだしな。」

 ノルンが魔法使い、ヘレンが神聖魔法、俺が魔法剣士というのが、まあ、分担的にいいだろう。サクラとシエラは、どこかの補佐に入ってもらおう。

 「さて、ちょっと早いけど、テストが終わったから、この時間は終わりましょう。このテストの結果を見て、それぞれの強化プランを明日発表するから、それを中心に訓練してもらうわ。汗をかいた人は、風邪を引かないようにね。……では、解散。」

 授業が終わって、学生たちがバラバラと移動しようとしたとき、マックスとかいう男子生徒が声をかけてきた。

 「先生たちの模擬戦を見たいっす。実力を見せてほしいっす。」

 見ると、解散しようとした生徒たちのほとんどが足を止めて俺達を見ている。

 「えっ、え~と。どうする?」

 ノルンが思案げな様子できいてくる。そうだな、魔法使いと剣士の戦い方を見せるのも勉強になるよね。……そういえば、パーティー内でこんな風に模擬戦をやるのは初めてだな。

 「ちょっとならいいんじゃないか?どうせだから連携を見せた方がいいから、ノルンとヘレンとシエラ、こっちは俺とサクラでどうだ?」

 「ああ、なるほど。魔法使いと魔法剣士の戦い方ね?みんなはいいかしら?」

 どうやらみんなも異論はないようだ。

 俺とサクラ対ノルン、ヘレン、シエラのコンビだ。

 定番通り、シエラが前衛でその後ろにヒーラーとしてヘレン、その後ろにノルンの陣営だ。こっちは、二人とも遊撃だが、そうだな俺が前衛でいいだろう。

 「とりあえず。そっちに魔法防御かけとくよー。」

 ヘレンはそういって、俺達に魔法防御の魔法をかけ、自分たちには物理防御の魔法をかけ、互いに距離を取る。

 学生たちは、ほとんどが残って観戦するようだ。

 (ジュン。そろそろいい?)

 ノルンから念話が届く。

 (いつでもいいよ)

 (じゃあ、やりますか)

 「じゃあ、始めるわよ。ピーッ!」

 俺は瞬時に身体強化といっても速度だけをかけて、シエラの持つ神竜の盾に袈裟切りの一撃を加える。シエラがわずかに後ずさる。と、俺の背からサクラが飛び上がり、クナイを10本ほど、後衛に投擲する。

 そのうち5本ほどは、シエラの盾にはじかれるが5本は後衛に接近する。

 と、ヘレンが即座に結界を張り、5本ともはじき飛ばす。

 俺達は、あらためて距離を取る。

 次は向こうの番だ。

 「行くわよ。」

 ノルンが宣言した瞬間、ノルンの頭上に30個の大きめの火球が浮かぶ。……大きいが威力は押さえてあるようだ。

 微妙なタイムラグで火球が順番に、しかも無規則に飛んでくる。

 飛んでくる火球を、俺は剣に氷属性を纏わせ、次々にはじいていく。はじかれた火球が瞬時に凍り付いて地面に落ちていく。

 その間に、サクラが火球をかいくぐりながら、三つ身の分身を生じて突進していく。が、3体とも攻撃がシエラの盾に防がれる。

 サクラはそのままバックステップをして、再び縦横無尽に動き回ってシエラの防御を抜こうとする。

 サクラとシエラが拮抗している間に、俺はちょっと本気を出して、一瞬でシエラの脇を抜け、ヘレンに迫る。

 と、次の瞬間、ノルンがハルバードで地面を突くと、俺の足下が泥に埋まってつんのめる。さすがノルンだ。絶妙なタイミングだ。

 「おっとっと……。」

 俺は間抜けな声を出しながら、ヘレンにぶつかって一緒に倒れ込む。

 慌てて立ち上がろうと手に力を入れて上半身を起こす。

 むにゅ。

 手に馴染みのある柔らかい感触がする。

 見下ろすと、俺の手はヘレンの大きな胸を鷲づかみにしていた。

 ヘレンの額に筋ができる。

 「ジュン。そういうのは二人っきりの時にしてくれるかしらね。」

 はい。すみません。

 謝る前に、爆炎の魔王たるヘレンの爆裂魔法が炸裂する。

 ドドドォン!

 花火が爆発したような凄まじい音が鳴り響くと、俺は大きく吹き飛ばされ宙を舞っていた。

 「ヘレエェェン。やり過ぎぃぃぃぃ!」

 俺は、情けない声を上げながら空を飛び、校舎のどこかの屋根をぶち破って落ちた。

 「あわわわ。ジュンさん。」

 シエラのわたわたした声がする。

 ジュンがヘレンと一緒に倒れ込んだと思ったら、大爆発が起き、大きく吹っ飛ばされた後、ノルンたちはその場で呆然と吹き飛んでいくジュンを見上げていた。

 ヒュー。ドコン!

 あ。落ちた。

 どうやらジュンは校舎のどこかに突っ込んだようだ。

 それを見届けたヘレンが、笑顔でみんなを見回すと、ぺろっと舌を出す。

 「テヘっ。やっちゃった。」

 「すっげぇ。まじすっげぇ。」

 さっきから、マックスがすっげぇを繰り返している。

 「うっさいわよ。あんた。すっごいのは見ればわかるっての!」

 そんなマックスをエーコが煩わしそうに見下ろしている。

 目の前では、目にもとまらないスピードの攻防を見せる先生たちがいる。

 「きゃー!」

 突然、女子生徒が黄色い声を上げた。

 ちょうど、その時、ジュンがヘレンの上に倒れ込んで立ち上がるところだった。ジュンの手はヘレンの胸にある。

 次の瞬間、大爆発が起き、「ヘレェェン」と言いながら、ジュンが学生たちの頭上高くを通って吹き飛ばされていく。

 「あれ?あそこって……。」

 そうつぶやいたのは女子生徒の誰か。

 「あらら。誰もいなきゃいいけど。」

 今度の声は、女子生徒のオリビアだ。オリビアは続ける。

 「たぶん、女子シャワー室よね。」