19 救出作戦3

 「えっ……。」

 その光景を見て、思わずサクラは驚きの声を漏らしてしまった。

 サクラの目の前には、一人の少女を守るように囲み、こちらを警戒している動物たちがいた。

 すぐ目の前には、一匹の美しい白銀の毛並みをした狼。その横には大きなとらがいる。

 その後ろにはカレンと、一匹の白熊がいた。

 カレンの肩には、小さなネズミがいる。

 ぐるるるるっ。

 目の前の狼が唸り声を上げる。

 それを見たサクラは、慌てて猫の姿のままでしゃべってしまう。

 「あ、カレンちゃんを助けに来たのよ。敵じゃないって!」

 サクラの声を聞いたカレンは驚きの眼で見つめてくる。

 「えっ。この猫ちゃんがしゃべった……?」

 サクラはしまったと内心思いながら、人型に変化する。

 「変化!」

 目の前で猫が人に変化したのを見たカレンが驚きの声を上げる。

 「え?ええぇぇぇぇぇぇぇ!サクラさん!」

 「あ!しぃー!しぃー!」

 慌ててサクラが人差し指を立てて、静かにするようにジェスチャーをする。

 それを見たカレンが両手で自分の口をふさぐ。

 サクラは、慌てて扉に耳を当てて、外の様子を伺う。…………。大丈夫……じゃない!

 下に降りる階段に近づく5人ほどの気配を感じる。

 「ちぃ!こっちに来るわ!……カレンちゃん。詳しい説明は後で!今はここから脱出するのが先よ。」

 「はい!……みんな。この人は味方よ。」

 カレンが話しかけると、動物たちはサクラへの警戒をゆるめた。

 ……ふうん。この子、魔物使いだったのね。

 サクラは、カレンたちを横目で見ながら、ジュンへと念話を飛ばす。

 (マスター。カレンちゃんと合流しました。が、見つかってしまったようです。……これから脱出しますので、援護をおねがいします。)

 (了解だ。よくやったぞ。サクラ。)

 サクラは、カレンを振り向く。

 「こっちに5人向かってきているわ。外にはマス……ジュンさん達が来ているわ。こっちからも脱出します。」

 「はい。わかりました。ハクとティグは前に。イオルとニックは後ろを警戒して頂戴。」

 カレンの指示を受けて、銀狼と大虎がサクラの横に並ぶ。その後ろにカレンが続き、その背後を白熊が陣取った。

 「じゃ、いくわよ。」

 近づいている人たちが階段の上まで来たのを感じながら、サクラは扉をあけて廊下に出た。

 「どこへ行こうというのかね?」

 階段の途中で、上から来た5人と対峙する。

 その先頭はチンピラっぽい男だが、そのすぐ後ろに鋭い目をした男が立っていた。只者じゃない雰囲気を出している。きっと3階にいた男だろう。

 その目つきの鋭い男が、油断なく警戒しながら、サクラたちの前を塞ぎ、誰何してくる。

 それに答えたのは、サクラの背後のカレンだった。

 「そろそろ、おもてなしにも飽きたから、帰らせてもらうわ。」

 目つきの鋭い男は、そのカレンを面白そうな表情で見つめた。

 「ほぉ。魔封じの縄をよくほどいたもんだ。」

 男の言葉に、カレンは肩のネズミを撫でながら、返事をする。

 「ええ。この子のお陰ですよ。……お陰でスキルを使えるわ。」

 「ふうん。興味深いな。だが、このままお帰りいただくわけにもいかなくてな。」

 男は、ちらりと後ろのローブの男を見やる。

 ローブの男がフードをおろすと、長い金髪をしたけばけばしい化粧を施した男が、ギラついた目でカレンを見ていた。

 「はっはっは。お前がハイエルフの小娘か。いいのう。お前の飼い主は、今日からこの私だ。……側にいる獣は要らぬ。女は……活きがよさそうだ。捕らえてくれたら報酬をやろう。」

 ……キモっ。なんだあのローブは。

 と次の瞬間、一階の入口の方から大きな音がした。何かを破壊するような大きな音がする。

 その音に男たちは一瞬戸惑ったようだが。目つきの鋭い男はニヤリと笑う。

 「ほう。どうやらお仲間かな。くははは。楽しめそうだな。……おいっ!お前らは玄関の方の奴をやれ!」

 そう言うと、両の手を体の前に構えた。魔力を込めたのだろう。その拳から青く光る四本ずつの鈎爪が伸びている。戦闘スタイルは武道家タイプだ。

 男の指示で、チンピラと2人のローブの人物が階段を駆け上がっていく。ここに残ったのは目つきの鋭い男と、さっきのキモい男、そして、一人のローブの男だ。

 「シっ!」

 目つきの鋭い男が素早く上から飛びかかってくる。拳の鉤爪が空を切る音をさせながら、迫ってくる。

 私は、忍者刀の白虎と青龍で、男の両手の鈎爪を受け流していく。両手のラッシュの合間に蹴りをしてくる男は、こういう狭いところでの乱戦に手慣れた様子がうかがわれる。

 私は、冷静に後ろに飛びすさって蹴りを避けると同時に、暗器のクナイを投げる。

 男がそのクナイを弾いた瞬間に、今度はこちらからラッシュをかける。鈎爪と忍者刀がぶつかる度に、火花が闇を照らしていく。

 その斬り合いに、白銀の狼たちも手が出せないようだが、もう一人のキモい男の警護役と思われるローブの男と戦っているようだ。

 「くはははは。なかなかやるな!この俺と互角か!」

 私と対峙している男が、愉快そうに笑っている。私は油断なく、男の挙動を見張る。

 ……この男は強い。