25 3対3

 急に訓練場にやってきた三人の男女。

 見た感じだと、魔力量は8組の学生より少し多いくらいか。学生にしては多い方かもしれないが、俺からしたら気にならない程度だ。それに、プライドが高いみたいで、非常に面倒だ。

 地球にいたときは、貴族なんて会うことはなかったし、せいぜいテレビを通して、陛下と皇后様の穏やかな笑顔や皇太子様などを見る程度だ。

 こっちの世界に来てからもほとんど貴族なんて見たこと……、ああ、そういえば海洋王国ルーネシアで王様たちに会ったか。あの人たちはいい人たちだったが、どうやらエストリアの貴族は問題がありそうだ。

 「それで、そのスリートップがわざわざ下々のところにご視察?」

 「ふふん。あと3週間ほどで卒業試験だからな。お手本でも見せてやろうかと思ってね。……この宮廷魔術師にふさわしい俺たちの美麗な魔法を見せてやろう。」

 どうやら彼らはすでにエストリア王国の宮廷魔術師団へ入ることが決まっているようだ。だけど……まあ、どうやら勘違いしている人たちだな。

 俺は内心うんざりしながらも、この学年の上位の実力がどの位のものか見てみたくもあった。

 「ほほお。それはありがたいね。是非、見せて貰いたいものだ。」

 俺は、そういうと学生たちを端に寄せて、模擬戦をやらせることにした。

 スリートップと戦うのは……、そうだなぁ、カレンに、魔法剣士のチータ、火風魔法使いのアメリにするか。

 3人のパーティーとして見た場合、どのレンジでも対応できるカレンを遊撃として、前衛をチータ、後衛からの殲滅を担当するアメリのバランスは悪くはない。相手も見たところでは、前衛レオナルドに、後衛がアメリアとエルザだろう。

 「よし。じゃあ、こっちはチータ、カレン、アメリの3人だ。」

 俺が名前を呼ぶと、3人が俺のところにやってきた。

 俺は、3人に小さな声で指示を出す。

 「いいか?まだパーティー戦を教えていない。今回は即席パーティーだから勝敗にはこだわらない。あくまでも相手の実力を見るのが目的だ。……怪我をしてもヘレンが直してくれるから全力でやって見ろ。」

 卒業試験の模擬戦では、トーナメント戦で個人戦にするか団体戦にするかを学生自身が選べる。個人で強い生徒で、魔法剣士の子は個人戦を選ぶ傾向があり、それ以外は団体戦を選ぶ傾向がある。どちらを選ぶかは、卒業試験の初日に決定しなくてはならず。団体戦の場合は同じチームを申告しなくてはならない。一つのチームは3人と決まっているから、誰を選ぶかも重要な要素となる。

 8組では、騎士志望の魔法剣士の子らは個人戦に出る予定だが、同じ騎士志望でも魔法使いの子は団体戦を志望している。それ以外は、魔法剣士の子らも含めて団体戦志望だ。

 そろそろ団体戦の子らは、実際に試験に臨むパーティーでの集団戦の訓練を始める予定だったから、ちょうどいいだろう。

 ちなみにレオナルドたちは、学年の上位3人であるにもかかわらずに団体戦に出場するそうだ。その理由がよくわからないから、今度カレンにでも聞いてみよう。

 訓練場の中央で、両方のチームが対峙する。

 レオナルドは予想通り前衛で、その後方にアメリアとエルザが杖を手に構えている。レオナルドは、おもむろに腰につけた剣を抜く。……まあ、学園支給の模擬戦用の剣なので、どれも同じだ。

 こちらはチータが前衛で長剣を構え、その後ろにカレンが弓矢を携えている。アメリはさらに後ろで杖を構えている。

 「両方とも準備はいいか?……よし。では、始め!」

 俺の号令と共に、魔法の詠唱が始まり、剣と剣が激突する………………。

 模擬戦は、残念ながらというか、予想通りというか、レオナルドたちの勝利で終わった。

 カレンはまだまだ余力がありそうだったが、チータとアメリが相手の魔法で吹っ飛ばされて戦線が崩壊してしまった。

 なるほど、確かにスリートップというだけのことはある。連携も、魔法の強さや使い方もレオナルドたちの方が上だ。とはいっても、それほど隔絶した差があるようにも見えない。

 俺の内心の考えを読んだのか、エルザと呼ばれた女子生徒が宣言する。

 「実践も、騎士団に稽古をつけて貰っている私たちにかなうはずもないわ!冒険者風情と優秀な騎士団との力の差を、本番の試験で見せて差し上げますよ!」

 彼らは俺たちがランクAだということを知らないのだろうか?さすがにランクA冒険者を格下に見るのは無理があると思うのだが……、それよりも騎士団への信仰が強いのかな?

 正直、俺たちは3人の阿呆な発言を聞いても別に思うところはない。しかし、周りを見ると、8組の生徒たちは内心で怒っているようだ。……おいおい。あんなの放っておけよ。特にカレンは、レオナルドたち三人をにらみつけている。

 俺の内心の呟きをよそに、カレンが進み出た。

 「ジュン、さん、たちのことまで見下すとは、許せません!必ずあなたたちよりいい成績を収めて見せるわ!」

 アメリアは、カレンをおもしろそうに見つめると、ほかの二人と顔を見合わせてニヤニヤする。

 「へぇ。じゃあ、トーナメントで勝ち上がってきなさいよ。対戦するのを楽しみにしてるわ!」

 そういうと、三人組はそれ以上何をするわけでもなく、訓練場から出て行った。

 訓練場に残された8組の生徒は、みな、見下されて憤慨している。

 たかだか世間に出たこともない学生の言葉だから、気にするほどじゃないんだけどね。

 とはいえ、俺は生徒たちを見ていて、こいつらに勝たせてやりたくなってきた。

 「なあ。ノルン。ヘレン。……なんだか、こいつらに勝たせてやりたくなってきたよ。」

 俺は、二人の頼れる嫁につぶやいた。

 「あんなに悔しがって。青春よねぇ。」

 「ぷっ。ノルンったら、年寄り臭いこと言わないでよ。……でもまあ、一泡吹かせるのもいいかもね。」

 二人の会話を聞きながら、俺は、のこり三週間の特訓をどうするか考えるのであった。