46 カレンの戦い4 決勝

 いよいよこの時が来た。

 暗い通路から競技場へと出る。途端に大きな歓声が天から降ってくる。

 アナウンスの声が響き渡る。

「おおお!今年度の試験のダークホース。8組の選手の入場です!リーダのアメリ、ゾヒテからの留学生のエルフ・カレン、そして、チータ選手です。」

 胸を張って堂々と中央に向かって歩く。アナウンスの説明が続く。

「今年の8組の生徒は、臨時講師の特訓を受け快進撃を続けています。そして、いよいよ団体戦決勝へと駒を進めてきました。カレン選手とチータ選手の衣装に皆さんお気づきでしょう。準決勝までとは装いも新たに身にまとうあの衣装こそ。自らの誇りを賭けて戦う時の伝統衣装です。この決勝にかける意気込みがあの衣装に表れているのでしょう。」

 中央で一列になって並ぶ私たちは、正面の入場口を見つめる。

 暗がりから、対戦相手の1組の生徒が登場した。

「対するは、前評判のとおり学年最上位の実力を証明してきました。1組のトップスリーの入場です。リーダーのレオナルド・ゼメキスを先頭に、アメリア・マリエル、エルザ・ドナーヌのチームです。なんとアメリア選手とエルザ選手はレオナルド選手と婚約済みというラブラブチームでもあります。」

 ゆったりとした歩みでレオナルドたちがやってくる。中央まできてレオナルドがマントを翻し、観客の声援に手を振って応えている。

 相手が私たちに向き直り、ニヤリと笑みを浮かべる。歓声が遠くなっていく。司会が私たちの紹介を続けているようだ。

「ふっ。とりあえずお見事と言っておこうか。……正直、8組のお前たちが決勝まで来るとは思わなかったよ。」

 言い返そうとするアメリを抑えて私が口を開く。「私には負けられない理由がある。必ず貴方に前言を撤回して貰うわ。」

「ふふふ。正直に言って、俺にとってはどっちでもいいんだが……。負けるつもりはないぞ。」

 そういってレオナルドは私の隣のチータを見た。「なるほど。腕輪は外したのか……。楽しみだ。全力で戦えるというわけだな。」

「私もいるわよ。忘れないで貰いたいわね。」アメリが鋭く言った。

 時間だ。アナウンスが告げる。

「両者は準備しなさい。」

 私はチータのすぐ脇に移動する。チータが手を握ったり開いたりして力を確認して、おもむろに模造剣を抜きはなった。後ろではアメリがスタッフを構える。

 正面を見るとレオナルドも剣を抜き放ち、その後ろでアメリアとエルザが杖を構えている。

 レオナルドの口が動く。遠くて聞こえなかったが言っていることはわかった。「いくぞ。」

 青天に空砲の音と共に司会の声が響いた。

「決勝戦。はじめ!」

 レオナルドが詰め寄りチータに斬りかかる。チータがそれを無造作に正面から受け止める。

 一瞬の拮抗の後、連続で斬り合いが始まる。二人の周りの空間に剣と剣がぶつかり合う火花があちこちで散る。

 私は、弓に魔力の矢をつがえて空に放つ。魔力の矢が数え切れない数に分裂して相手の後衛陣に襲いかかる。それと同時に、レオナルドとチータの脇を走り抜けようとする。

 魔力の矢が結界に阻まれてバチバチといっている。どうやらアメリアが結界を張り、その中でエルザが詠唱を続けているようだ。……長い。あの詠唱を止めなくては。

 私は矢に火と風の魔力を込めて次々に放つ。矢は結界に阻まれるが次々と爆発を起こす。

と、気配を感じて後ろに飛びすさると、私のいたところにレオナルドの剣が通り過ぎた。

 ふっとレオナルドが距離を取ると、エルザの魔法が大きな炎となって飛んでくる。中級魔法フレイム・ランチャーだ。この位置だとチータも危ない。

「ウンディーネ。」

 一言でお願いし水壁を作り上げる。フレイム・ランチャーの大きな火炎弾がぶつかると、爆発の衝撃が水壁に襲いかかる。

 爆煙がおさまると、アメリの氷魔法が氷雨となって相手を打ち続けているところだったが、相手も結界でそれを防いでいた。

「うおおお。すごい戦いです。まさしく決勝戦にふさわしい!両チーム共に負けていません。」

 司会の叫ぶような声が聞こえる。

 レオナルドが剣を肩に乗せた。チータを見て、「なかなかやるな!そろそろ様子見は終わりにしよう。」

 レオナルドがおもむろに剣を構えて全身に魔力をまとわせているのがわかる。さっきよりも強い魔力だ。

 チータも見たことがないくらい獰猛な笑みを浮かべている。まるで計ったように二人が飛び出して切り結ぶ。

 ぶつかり合った剣と剣の衝撃が一陣の風となって吹き抜けた。

 私は精霊に力を願う。

「お願い。」

 ナイフから水が伸びて、準決勝と同じく鞭となる。「いくわよ。」

 体をシルフの風が包む。空を飛ぶようにレオナルドを飛び越え、10メートルの高さから鞭を振るう。

 まるで大蛇が襲いかかるように、鞭が地面を削りながら後陣のアメリアとエルザを襲う。結界で防ごうとしているようだが関係なく、結界の上から水鞭を何度も叩きつける。

「きゃあ。」

 結界が壊れ、水鞭がアメリアを打ち据えるとアメリアを向こうにはね飛ばした。

 地面に着地し続いてエルザに攻撃を加えようとナイフを振りかぶる。

「させん!波動剣ムーブ

 とっさにチータから距離を取ったレオナルドが、剣に魔力をまとわせて横になぎ払った。剣から放たれた三日月状の魔力が飛んでくる。

 チータが瞬間移動したように私の前に現れると、飛んでくる魔力に合わせて剣を上段から振り下ろした。

「無駄よ。カレン様には指一本触れさせません。」

 レオナルドの魔力はチータによって二つに切られ、私の左右を飛んでいった。

 その時、こっちのアメリの詠唱が終わる。

「――、火炎旋風。」

 同時に、エルザの魔法も完成する。「――。ブリザード。」

 炎と氷の魔法が真っ正面からぶつかり合い、勢力が拮抗する。

 二つの魔法がせめぎ合う中からレオナルドが飛びだしてきた。剣が上段から振り下ろされる。「残月!」

 けれども、魔力のこもった斬撃をチータが軽々と剣で受け止める。それを見たレオナルドが舌打ちすると、再びバックステップをして距離を取った。

「まさか力業で魔法剣を受け止めるとはな。」

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