『物語の法則』読了
クリストファー・ボグラ―&デイビット・マッケナによる脚本創作術の本『物語の法則』を読了しました。
本書で紹介された、優れた脚本を書くための|工具《ツールキット》は次の通りです。
1.テーマ
2.求めるものリスト
3.重要な取引は何か(各シーンにおける複数の人物の対立・交渉)
4.観客との契約
5.両極の対立
6.英雄の旅路(物語のアーキタイプ)
7.英雄の内面的な旅路(キャラクター成長曲線)
8.相互アクション(駆け引き)
9.キャラクターの機能。アーキタイプとそれ以外の類型
10.キャラクターの代数方程式(及び不自然な仕事について)
11.ログラインとシノプシス
12.ウラジミール・プロップのおとぎ話アプローチ
13.プロップのキャラクター
14.環境的事実
一太郎でノートを取りながら読んだところ、1万5000文字を超えてしまいました(笑)
ですが、参考になるところが多く、小説の物語構築にも大きな力となると思われます。
そのノートをすべて公開するのはさすがにマズいので、一部だけ紹介します。おそらく項目名を見ただけで、創作をしている人にはだいたいのイメージがつくかと思います。
興味を引かれた方は、ぜひ本書をお買い求め下さい。
ツール「英雄の旅路」
・物語の隠すべき骨組みであり、基本的バリエーションの一つ。
【一幕】別離
①日常世界 ②冒険への誘い ③冒険の許否 ④賢者との出会い
【二幕A】試練への降下
⑤戸口の通過 ⑥試練・仲間・敵 ⑦最も危険な場所への接近
【二幕B】イニシエーション
⑧最大の試練 ⑨報酬 ⑩帰路
【三幕】帰路
⑪復活 ⑫宝を持っての帰還
ツール「英雄の内面的な旅路」
【一幕】
①不足した認識 ②認識の高まり ③変化へのためらい ④克服
【二幕】
⑤取り組み ⑥実験 ⑦準備 ⑧大きな変化 ⑨実績
【三幕】
⑩再取り組み ⑪最後の挑戦 ⑫勝利
ツール「キャラクターの機能」
①主人公〈ヒーロー〉
②影〈シャドウ〉
③賢者
④使者
⑤戸口の番人
⑥変身する者〈シェイプシフター〉
⑦トリックスター
⑧仲間
ツール「ログラインとシノプシス」
ログライン……作品の内容を1行で表す。
ログライン2……各幕の内容をそれぞれ1文で表す。
シノプシス……作品のあらすじを1600~2000文字でまとめる
・プロットの欠点、論理的矛盾、誤った設定、重要な試練に立ち向かっているかどうか、主人公の行動が一貫しているかどうか、重要な局面で重要な行動を取っているかどうかをチェック。
ツール「環境的事実」
日付、場所、社会的環境、政治的環境、宗教的環境、経済的環境。
また巻末に「映画会社は脚本に何を求めているか」がまとめられていましたが、これはそのままチェックリストになりそうです。
以下、抜粋。
①キャラクター
・人物に現実味はあるか。
・行動は人間の性質と矛盾していないか。
・誰の物語か明確になっているか。応援すべきは誰か明確か。
・主要人物が誰かわかるようになっているか。主人公に好かれる魅力はあるか。共感しやすさ、欠点、誰もが理解できる問題を持っているだろうか。
・主要人物は変化、成長、発展を遂げたり、何らかの人生の教訓を得ているか。
・主要人物は受け身にならずに活発に動いているか。受け身の性格なら、どこかで自分のために立ち上がっているか。
・主役と悪役の力量は匹敵するか。悪役に興味深い優位な点があるか。
②構成
・ストーリーはよくできているか。惹きつける魅力があるか。巻き込めるか。感情をかき立てたり、何かを感じさせるだろうか。
・流れはスムーズか。不安定や混乱があり、観客を疲れさせないか。
・物語を引っ張る強力な語り口があり、つねに活発に話が進んでいるか。散漫なところや無関係な脱線はないか。
・興味深い、予想の付かない発展や謎解きはあるか。何分かに一度おもしろいことや驚くことがあるか。
・必要な説明は上品かつ無造作に行われているか。ぎこちなくなっていないか。
・ストーリーは適度なスピードで転がっていくか。
・第二幕の部分で、新鮮で意外な展開によって興味を維持できているか。
・悪役は報いを受けているか。罰は罪にみあったものか。
・結末は満足がいくものか。だから何?という感情を残していないか。
③会話
・実際に人びとが話しているような会話になっているか。
・首尾一貫した会話になっているか。その人物らしいことを話しているか。
・人物はそれぞれ異なる話し方になっているか。ライター自身の言葉のようなセリフになっていないか。
・芝居がかりすぎていたり、しゃべりすぎたり、会話に頼るあまり視覚効果が不足していないかどうか。
④コンセプト
・新しく新鮮な感じのする作品かどうか。またはおなじみの題材に新しいひねりを加えてあるかどうか。
・この作品を観たがる観客はいるかどうか。観客層(若い男性、若い女性、大人の男性、大人の女性)の誰もが観たがる作品か、誰にでも訴える作品が理想。
・話の中心に、異なる道徳観や信念などの明白な対立図式があるかどうか。単なる善悪の対立に終わっていないかどうか。
・短い言葉でたやすく説明できる作品かどうか。
⑤予算―省略
⑥基本ライン
・1年に10本しか映画が作れないとしたら、この作品はそれに入るだろうか。
・ターゲットにしている観客は誰か。制作費を掛けただけ観てくれる観客はいるかどうか。
・この脚本に独自のものがあるかどうか。安っぽいなら安っぽいで良質かどうか。
小説執筆に有効な心理学の紹介や、テオプラストスのキャラクター類型(邦題『人さまざま』、岩波文庫、これがまたおもしろい)も紹介されていましたが、それらは省略。
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